【8月8日 AFP】東京と大阪で8日、約72年ぶりにコメ先物取引が再開された。福島第1原発事故の影響によるコメ供給不足の懸念から買い注文が殺到し、東京では初値が付かなかった。

 3月11日の東日本大震災から5か月、今も福島原発から放出され続けている放射性物質によって牛肉などさまざまな農産物が汚染されている。コメも放射能に汚染されているのではないかという消費者の不安が高まる中、昨年収穫されたコメを買いだめしている家庭も多い。一方、政府は放射性物質が検出されている地域にコメの放射性物質に関する検査を命じている。

 日本のコメの先物取引は、世界に先駆け、江戸時代の1700年代初頭に始まった。しかし太平洋戦争前夜、食糧統制が厳格化される中で1939年にコメ先物取引は中止された。先物取引はコメ価格の急変を招きかねないとしてJAなどは、先物市場に反対してきた。

 コメ先物取引は、都内の東京穀物商品取引所(Tokyo Grain Exchange)と大阪市の関西商品取引所(Kansai Commodities Exchange)で、投資の促進、コメ価格形成の透明性改善、コメ市場の開放を目指す2年間の試験上場として再開された。

 午前9時の取引開始直後から買い注文が売り注文を圧倒し、東京では価格の乱高下を防ぐために取引を一時中断するサーキットブレーカーが発動され、値が付かないまま初日が終わった。一方、関西では12年1月物の北陸産コシヒカリが、事前に示されていた基準値の1万3700円を大きく上回る1俵(60キログラム)1万9210円の初値をつけた。

 東穀取のコメ先物担当責任者は、原発事故の影響で、今年の秋に市場に出回るコメの量が大幅に減るという懸念が反映されていると語った。東穀取の渡辺好明(Yoshiaki Watanabe)社長は、取引が落ち着くまでには数日かかるかもしれないとの見通しを示した。(c)AFP