【7月29日 AFP】世界一裕福な超大国のはずの米国がいま、世界経済を混乱に陥れかねないデフォルト(債務不履行)の瀬戸際まで追い詰められてしまったのは、なぜか。

 1930年代の大恐慌以来となる不況、大幅減税、イラクとアフガニスタンの戦費、高齢者向け医療保険(メディケア)の導入――これら全てが、米財政計画を狂わせた。バラク・オバマ(Barack Obama)大統領が25日の演説で述べた表現を借りれば、「この10年間、われわれは歳入以上に支出してきた」のだ。

■潤沢な財政黒字、10年で天文学的赤字に

 米議会予算局(Congressional Budget OfficeCBO)によると、2000年10月1日時点での米連邦予算は2362億ドル(約18兆円)の黒字で、10年後の2010年には7100億ドル(約55兆億円)の黒字が見込まれていた。

 しかし「10年間に制定された法律に経済情勢の変化が相まって、連邦予算の長期的展望は劇的に変わった」と、CBOは10年3月の報告書で指摘している。オバマ大統領が2月の予算教書で示した11年度の財政赤字見通しは、過去最高の1兆6500億ドル(約130兆円)。CBOが下方修正した直近の見通しでも、1兆3000億ドル(約100兆円)に上っている。

■重くのしかかる2つの戦争

 与党・民主党の主張はこうだ。01年1月に民主党のビル・クリントン(Bill Clinton)大統領(当時)が退任した際、米財政はまだ黒字だった。その後、共和党のジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)大統領の政権下で財政状況が悪化し、天文学的な財政赤字に転落したのだ――。

 ただ、クリントン政権は前任のジョージ・H・W・ブッシュ(George H.W. Bush)大統領(パパ・ブッシュ)の共和党政権による増税策や、インターネットバブル(ITバブル)などの恩恵を受けていた。

 01年1月に就任した息子のジョージ・W・ブッシュ大統領は、黒字見通しを理由に、民主党の反対を押しのけて歴史的な大幅減税を断行した。だが、この時すでにITバブルははじけ、同年3月に米経済は景気後退に陥る。そこへ9.11米同時多発テロが起き、米国はアフガニスタンとイラクの戦争に相次いで突入した。

 共和党は戦費調達を最優先した。民主党は増税を求めたが、結局は共和党の戦費調達政策に同意した。超党派の米議会調査局(Congressional Research ServiceCRS)が今年3月に発表した報告書によれば、11年までに2つの戦争に投入された予算は1兆2830億ドル(約99兆5000億円)にも上る。

 08年の世界金融危機の影響で米景気が急激に悪化したことも手伝って、ブッシュ前大統領の在任1期目の終わりに5兆7000億ドル(約442兆円)まで膨らんでいた財政赤字は、09年1月のブッシュ氏退任時にはさらに4兆9000億ドル(約380兆円)が積み上がっていた。

■情勢を左右する強硬派「ティーパーティー」

 米経済界は、民主・共和両党が8月2日の期限までに連邦債務の上限引き上げに合意できなければ、不安定化している世界経済に大混乱をきたすと警戒感を強めている。オバマ大統領も、米国債がデフォルト(債務不履行)に陥れば「経済ハルマゲドン」が起きると警告した。

 しかし共和党内には、いかなる増税や債務上限引き上げにも反対し、歳費削減を強硬に要求する草の根保守派運動「ティーパーティー(Tea Party、茶会)」の存在があり、共和党指導部としても妥協は難しい情勢だ。 (c)AFP/Olivier Knox

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