【7月28日 AFP】米連邦債務の上限引き上げ問題で対立する民主、共和両党が8月2日の期限までに合意できず、米国債がデフォルト(債務不履行)に陥るか格下げされた場合、余波は世界中に及ぶだろうとの見方で経済アナリストの見方は一致している。だが、影響の深刻さの度合いや、影響がどれだけ長く続くかは、誰の目にも不透明だ。

 ニューヨーク市場では3日間連続でドル安が進み、米国債のデフォルト保証料も上昇した。あらゆる点で市場は敏感になっており、「経済の終末」が迫りつつあるとの警告の声もそこかしこから聞こえる。

■「世界の基軸通貨」が救いとなるか

 ただ、アナリストらは、米ドルが世界の基軸通貨だという一点において、悪影響の拡大は抑えられるのではないかと指摘する。ドルに取って代わる通貨はなかなか存在しないのだ。米ドルとドル建て国債は、世界各国の外貨準備の主要な運用先で、金融機関の多くも担保や積立金で米国債に強く依存している。

 格付け大手フィッチ(Fitch)は27日、米国債が最上級トリプルAの格付けを失えばコール市場を中心に短期的な市場の不安定化を招くと予測する一方、米国債そのものは「世界の確定利付証券市場における基準としての地位を維持するだろう」との見方を示した。

 こうした見方が正しければ、米国債の格下げや一時的なデフォルトが起きたとしても、米政府の借り入れコスト(現在世界で最も低水準にある)がやや増大し、ドル建て投資にわずかな損失が出る程度で済むかもしれない。

■財政赤字問題が壁

 だが、米与野党の政治対立の焦点は、財政赤字の削減だ。米国が財政引き締めに動けば、世界経済への影響は甚大なものとなりかねない。

 現在の米財政は、毎月1200億ドル(約9兆円)の国債追加発行が必要な状況だが、米政府の借金はすでに借り入れ上限の14兆3000億ドル(約1120兆円)にほぼ達している。

 共和党内に上限引き上げそのものへの反対が強い中、オバマ政権は、国債償還期限の8月2日までに与野党合意ができなければ支出を大幅に削減せねばならず、デフォルトの影響は連邦公務員の給与や退職手当、債務返済など多岐に及ぶと主張する。

 一方、米格付け会社スタンダード&プアーズ(Standard and Poor'sS&P)は、米政府が適切な赤字削減計画を提示できなければ、債務上限の引き上げいかんにかかわらず米国債を格下げすると警告した。

■緊縮財政化なら世界経済に危機

 市場はおおむね楽観的で、最終的に上限は引き上げられると見ている。それでも、より大局的な視点から見れば、世界最大の経済大国の支出削減は避けられない。もし米政府が共和党の要求を受け入れ、大幅な支出削減を政治決定するならば、すでに弱体化している米経済は再び景気後退に陥るだろう。

 そして国際通貨基金(IMF)が今週指摘したように、米国の不景気は、2008年の金融危機から立ち直りつつある他国の経済にも飛び火し、壊滅的な影響をもたらしかねない。(c)AFP/Paul Handley

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