【6月28日 AFP】東日本大震災と福島原発事故後としては初となる東京電力(TEPCO)の株主総会が28日、都内のホテルで開かれ、株主たちは原子力発電所事故に対する東電の対応などを厳しく非難した。

 東電の株価は原発事故以降、約85%下落している。会場となったザ・プリンスパークタワー東京(The Prince Park Tower Tokyo)の周囲には、約100人の警察官が配備された。

 総会で、ある株主が涙を浮かべて立ち上がり、「福島、日本、世界は、原発事故前には戻れない。もうあなたを信じられない。あなたは3月11日直後にすぐに辞めるべきだった」と述べて東電の勝俣恒久(Tsunehisa Katsumata)会長の議長不信任動議を出すと、会場から拍手が巻き起こった。

■原発撤退議案は否決

 東電株主は93万3031人、うち74万6927人に議決権がある。総会では、株主402人が発議した原発撤退議案は反対多数で否決され、会社側が提案した取締役の選任議案は賛成多数で可決された。株主からの怒りの声は収まらず、東電はあらためて事故について謝罪した。

 総会に集まった株主は同社過去最多の9309人。総会では事故対策への批判や、原発撤退を求める怒りの声が次々と上がり、開催時間も同社過去最長の6時間に及んだ。

 ある株主に東電の事故対応について尋ねると「時代が時代なら切腹ですよ」と厳しく批判した。「東電にはとても腹が立っている」という株主の女性はAFPの取材に、「問題が繰り返し起きていたのに、絶対に変えようとしない」と東電の安全対策のありかたを批判した。別の男性株主(60)は、「もう原発はいらないと、東電に言いたい。格付けがトリプルAの会社がこんなことになるなんて思ってもみなかった。原発事故は人災だ」と取材に答えた。

 一方、会場のホテル前では抗議デモが行われ、福島県の人びとが集まった。福島県郡山市を夜明け前に出発してきたというある参加者(33)は「事故は、福島の子どもたちから健康に生きる権利を奪い、若者たちから働く希望を奪い、お年寄りたちから築き上げてきたものを奪った」と取材に語った。(c)AFP/Shingo Ito