【4月1日 AFP】東京電力福島第1原子力発電所の事故の長期化で、海運業界にも動揺が広がっている。各国海運企業の間には、日本の主要港への寄港や一部航路を避ける動きも出ており、混乱が続けば国際的な物流に支障が生じ、日本の復興の妨げにもなると専門家は警鐘を鳴らしている。

■航路避ける動き相次ぐ

 独海運大手ハパックロイド(Hapag-Lloyd)は、船舶や乗組員、貨物の放射能汚染を懸念し、東京港と横浜港への寄港を一時中止した。

 現在のところ他に東京湾への寄港を中止した船会社はないが、福島第1原発の周辺航路を避ける動きは広がっている。デンマークの海運大手マースク(Maersk)は、原発の周囲140カイリ(約260キロ)を航行禁止区域に指定。シンガポールの海運企業ネプチューン・オリエント・ラインズ(Neptune Orient Lines)の子会社APLは、さらに範囲の広い半径200カイリ(約370キロ)を航行禁止とした。香港のオー・オー・シー・エル(OOCL)は、東京、横浜、名古屋への寄港は続けるが、放射線量を「注意深く監視」していると発表している。

 調査会社IHSグローバルインサイト(IHS Global Insight)のアジア太平洋地域担当主席エコノミスト、ラジブ・ビスワス(Rajiv Biswas)氏は、福島第1原発から放出される放射性物質は、日本の太平洋沿岸の航路・港湾にとって「目前に厳然と存在する危機」だと指摘する。

 同原発から漏れる放射性物質は、これまでのところ封じ込めに失敗しており、農作物や飲料水を汚染している。周辺地域を産地とする食品の輸入を禁止する国も出ている。また31日には、同原発周辺の海水から基準値の4385倍というこれまでで最も高い値の放射性ヨウ素131が検出された。

 当局は海水汚染について、海流で拡散するため、人が摂取するまでに濃度は相当薄まる上、ヨウ素131は比較的、半減期が短いと発表している。

■寄港や荷揚げの拒否を恐れる海運業者

 健康被害への懸念のほかにも、海運業界への影響は大きい。放射線を浴びた船舶や貨物が、寄港や荷揚げを拒否され、多大な経済的損失につながる恐れがある。

 中国アモイ(Xiamen)港の当局は前週、放射線量の異常を理由に、日本の商船の荷降ろしを拒否した。業界関係者によればこの船は、福島県沖67カイリ(約125キロ)を通過していた。

「東京港や横浜港への寄港を制限する海運業者がさらに増えれば、日本の貿易にとってロジスティック面で非常に厳しい事態になる」とビスワス氏は語る。日本の海運輸出入の3分の1以上が、この2港を経由しているからだ。「神戸などもっと西の港湾に迂回させることは可能だが、それでは西日本の港湾の取扱量が現在よりもさらに大幅に増え、物流上に甚大な障害が生じるだろう」(c)AFP/Martin Abbugao