【10月30日 AFP】アジア太平洋地域に自由貿易圏を構築する環太平洋パートナーシップ協定(Trans-Pacific PartnershipTPP)をめぐり、日本国内での議論が紛糾している。輸出企業が参加を強く望む一方、安い輸入農作物の流入を恐れる農家は断固反対の立場だ。

 米国が主導するTPPは、11月に横浜で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議で主要議題となる見込みで、政府は参加の是非をめぐる方針を急ぎ固める必要に迫られている。

■米国は参加へ、中国も関心

 日本経済団体連合会(経団連、Keidanren)の米倉弘昌(Hiromasa Yonekura)会長は今週、「参加しないと日本は『世界の孤児』になる」と述べ、政府に交渉への早期参加を求めた。

 現在TPPに正式に参加しているのはシンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイの4か国のみだが、米国、オーストラリア、マレーシア、ペルー、ベトナムが現在すでに交渉に入っている。また、国内メディア報道によると、中国も参加を検討し始めたとされ、読売新聞(Yomiuri Shimbun)は「米中が日本の頭越しに手を握ることになったらどうなるのか」という政府通商筋の声を伝えた。

■どれが正しいの?省庁の試算バラバラ

 菅直人(Naoto Kan)首相は参加に意欲を見せるが、政府内部でも意見は全くまとまっていない。

 内閣府は今週、TPP参加で日本の実質国内総生産(GDP)が最大0.65%押し上げられるとの試算を発表した。経済産業省も、不参加ならばGDPが1.53%低下すると警告した。ところが、農林水産省は逆に、TPP参加によって国内農家が大打撃を受け、1.6%GDPが落ち込む結果になると発表した。

 こうした中、全国農業協同組合中央会などJAグループは、参加には断固反対すると表明、国への要請に力を入れる構えだ。

■「参加しなければ世界から置き去りに・・・」

 ただ、ここで日本が苦渋の決断をしなければ、世界経済の中で競争力を失い、孤立するだけだとの指摘もある。隣国の韓国はインド、欧州連合(EU)と相次いで自由貿易協定(FTA)を結び、現在は米国との交渉下にある。実際、前年の欧州における家電製品のシェアは、韓国製品が10年前比で10%近く伸ばしたのに対し、日本製品は20%から10%に半減した。

「もしTPPに参加できなければ日本経済は、急成長するアジアや世界から取り残されてしまうだろう」と、本間正義(Masayoshi Honma)東大教授は指摘している。(c)AFP/Kyoko Hasegawa