【10月25日 AFP】中国がレアアース(希土類)の輸出を制限する理由は何か? この疑問について専門家らは、利益の最大化のため、自国のハイテク産業育成のため、レアアース供給元を他国にも拡大させたいためなど、いつくかの見解を示している。

■埋蔵量と供給量のアンバランス

 レアアースは17元素のグループで、液晶テレビや携帯音楽プレーヤーiPod、ハイブリッド車など幅広いハイテク製品に不可欠な資源だが、2009年時点で世界総供給量の97%を中国産が占める。

 ところが、中国の埋蔵量は世界の3割程度にすぎない。一方、世界の埋蔵量の15%を有する米国、5%のオーストラリアはともに、安価な中国産レアアースとの競争や環境への配慮を理由に、現在は採掘を中止している。

   「中国は、世界に無制限にレアアースを供給する気はないと言っている」。中国でレアアース産出に携わるカナダ企業ネオテクノロジーズ(Neo Technologies)のジョフ・ベッドフォード(Geoff Bedford)副社長は、中国南東部福建(Fujian)省アモイ(Xiamen)で開催された業界会合でAFPの取材に応じ、「だからこそ、削減の意志を暗に示してきた。他国の参入を望んでいるのだ」と語った。

■自国ハイテク産業育成を優先?

 一方、中国当局は輸出を削減することによって、自国のハイテク企業へのレアアース供給可能量を増やし、国内産業の価値を高めようとしているのだと指摘する声もある。

 アモイでの業界カンファレンスを主催したマーケット分析企業のメタルページズ(Metal-Pages)のNigel Tunna最高経営責任者は、次のように述べる。「中国は、自国がレアアースを必要としていることに気付いたのだ。資源を輸出するよりも、中国国内でその資源を用いて付加価値をつけ(製品を)輸出する方が、価値が大きいと気付いた。これが、問題全体の背景にある要因だ」

■環境保護も要因か

 中国商務省は、「枯渇しかねない資源を保護し、持続可能な開発を保護するため」、中国当局は2006年以降削減している輸出枠をさらに削減する権利を持つと、繰り返し主張している。中国のレアアース産業では違法採掘がまん延し、採掘による汚染も問題となっている。

   「過去の数年間、非常に無計画に行われた採掘によって環境が破壊された」。AFPの取材にこう説明した商務省国際貿易部門の高官は、「レアアース(供給)の削減は、世界にとって良いことではない。中国の対応への他国の理解を望む」と述べた。(c)AFP/D'Arcy Doran

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