【10月22日 AFP】仏自動車大手ルノー(Renault)の新型電気自動車「Zoe」(ゾエ)の名称のせいで、わが子がイジメにあうかもしれない――。このような理由で、「ゾエちゃん」を娘にもつフランスの2家族がルノーに対し、名称の使用差し止めを求める訴えを起こした。

「そろそろオイル交換の頃じゃないか、とか、エアバッグを見せてみろ、などと(子どもたちが)言われるのを聞きたくはない」

 家族側の弁護人は法廷で、「採算性の低い車を少しでも売ろうと、子どもの名前を盗んでいる」とルノーを非難。また、昨今のさまざまな商品のネーミングについて「産業界は、製品に人間味を与えて売り込もうと、人の名前をブランド名にしている。運がよければかわいい植木鉢の花の商品名にでもなるかもしれないが、大人のおもちゃやトイレブラシと自分の名前が一緒にされればたまったものではない」と批判した。

 ZOEは2012年にルノーが発売を予定する小型の無公害電気自動車。ルノーは人名ではEの上につくアクセント記号を取り、さらに3文字とも大文字にして商標登録を済ませている。

■フルネームが「ゾエ・ルノー」

 一方、共にフルネームで「ゾエ・ルノー(Zoe Renault)」となる娘をもつ2家族は、ファーストネームを商品名に使わないようロビー活動などを行っている圧力団体から資金援助を受け、ルノーの行為は「プライバシーの侵害と個人情報窃盗」にあたるとして今回の訴訟を起こした。

 ルノーはこれまでに「ロガン(Logan)」、「メガーヌ(Megane)」、「クリオ(Clio)」などのファーストネームを自社ブランド名に採用しているが、家族側の弁護人は、自動車ブランドに使われたファーストネームを子どもに名付けることを忌避する傾向が親たちの間にあると指摘。実際に、クリオと名付けられた女児が、車の名前と一緒にされたくないという理由で、3歳で洗礼をやり直し「マルゴ(Margot)」に改名した例があると主張した。

■家族側弁護人にも「前科」あり・・・?

 これに対しルノー側の弁護人は、ロケット名「アリアン(Ariane)」、キャットフード・ブランド「フェリックス(Felix)」、香水ブランド「アナイス(Anais)」など、ファーストネームを使ったブランドは他にも数多くあり、それでもこれらの名前の人気は落ちていないと反論。

 さらに、「ゾエちゃん」家族側の弁護人がかつて、「ジェラール(Gerard)」というファーストネームの商標権を裁判で確保し、最低のフランス映画に贈られる映画賞「ジェラール賞(Gerard Awards)」に利用されている点を指摘し、この弁護人は偽善者だと非難している。

 裁定は11月10日に下る。(c)AFP