【10月18日 AFP】アジアに大量の投機マネーが流れ込んで各国の通貨高を招いており、アジア各国は自国の輸出産業の保護を強めている。

 アジア地域への大量の外資流入は、同地域が受けた世界的な経済危機の影響が相対的に少なかったとの投資家の観測を反映したものだが、グローバル市場でのアジア製品の価格を押し上げ、国内の不動産バブルをあおっている。

 11月の主要20か国・地域(G20)首脳会議(サミット)に向けて10月22~23日にG20財務相・中央銀行総裁会議を開催する韓国政府は、為替相場の混乱をめぐって摩擦が高まっており、保護貿易政策につながる懸念があると警告を発した。

 実際、政治的な小競り合いはすでに始まっている。日本は前週、韓国当局が対ドルでのウォン高を抑えるために為替介入を行っていると指摘。G20サミット議長国としての韓国の役割が「厳しく問われるだろう」と批判した。

 中国は人民元切り上げ圧力をさらに強める米国に対し、人民元が米国の景気低迷の「スケープゴート」にされることはあってはならないと主張して人民元相場の維持に努めているが、中国以外のアジア各国の通貨は対ドルで値上がりを続けている。

 米ワシントンD.C.(Washington D.C.)の国際金融研究所(Institute of International Finance)は、2010年に新興国に流入した民間資本総額は2009年の5810億ドル(約47兆2000億円)を大幅に超えて8250億ドル(約67兆円)に上り、そのうち3430億ドル(約27兆8000億円)がアジアの新興国に流れ込むだろうとの予測を発表した。アジアへの資本流入は2009年が3370億ドル(約27兆3000億円)、2008年が1220億ドル(約9兆9000億円)だった。

■通貨高の抑制が精一杯か

 ロンドン(London)、ラボバンク・インターナショナル(Rabobank International)の外国為替上級ストラテジスト、ジェーン・フォーリー(Jane Foley)氏は「自由貿易の理念に反するが、これらの大量の資本流入を相殺するためにブラジルやタイ、韓国などの当局が為替介入に踏み切ったことはよく理解できる」と述べる。

 国際通貨基金(IMF)が「通貨戦争」を回避するための多国間構想を進めているものの、各国当局は、自国の輸出産業保護のためにさらなる措置に踏み切る姿勢をみせている。

 コンサルタント会社キャピタル・エコノミクス(Capital Economics)は顧客向けアナリスト・レポートで、「アジア新興国で追加の為替介入や外貨準備高増加があり、さらに、資本流入を抑制するための規制の追加導入もあるとみている」とした上で、「外国資本の遮断や通貨の安値誘導までは行わずに、資本流入と通貨高の抑制をする程度にとどまるだろう」との見通しを示した。(c)AFP/Daniel Rook