【9月25日 AFP】都心のネオン街から富士山の山頂まで、全国500万台が設置されている自動販売機大国、日本。

 日本は犯罪率が低く、販売機荒らしもほとんどないことから、企業は安心してあちこちに自販機を置いている。従来の飲料自販機にとどまらず、最近では傘や花、お守り、調理済みの食べ物、果ては人間の「心を読み取る」自販機まで登場した。

 その便利さに「自分の部屋にも1台ほしい」とまで言う日本の若者に、自販機なしの生活など想像もつかないだろう。

 国民50人に1台、全国に250万台ある飲料専門の自販機は、日本自動販売機工業会(Japan Vending Machine Manufacturers' Association)によると、09年だけで約2兆3000億円を売り上げた。タバコその他の自販機を加えた台数の合計は500万台を超え、自販機の過密度は日本が世界で最も高い。

 企業も次々と自販機向けの新商品を提供している。食品生産加工企業ドール(Dole)は6月、都内の駅にバナナの自販機を置いた。バナナ1本130円、1房390円で販売している。「スーパーやコンビニでもバナナは買えるが、販売機で買うことが楽しまれている」と同社広報は言う。

 日本コカ・コーラ(Coca-Cola (Japan) Company)は保有する98万台の自販機のうち5100台で、地震などの大きな災害時に飲料を無料配布するとしている。2月のチリ大地震の際には、津波を警戒した避難した北海道沿岸の人たちに、自販機1台でボトル680本を配布した。一方、沖縄県ではコーラの自販機にマイクを搭載し、希少な鳥の鳴き声を録音して自然調査に一役買っている。

■読み取った顧客情報からオススメ商品

 最近では、自販機の支払いはカードや携帯電話でもできる。ニュース速報や野球のスコアを表示するなど、社会的な機能をもつ自販機も現れた。

 中でも最先端は、カメラとソフトウェアを使い、自販機の前に立った顧客の性別と年齢を推測し、購入商品を勧めるインテリジェント自販機だ。年齢は10歳ごとの層で区切り、的中率は75%だという。

 東京・品川駅にある自販機は、読み込んだデータとPOS情報に基づいて顧客にスポーツドリンクがよいか、冷えたエスプレッソ・コーヒーがよいか勧めてくる。最近この自販機を使ったある48歳の女性は、3種類の飲み物を勧められた。中に好みのフレーバーティーもあり、女性はこれを購入した。これからもどれを買うか迷った時には、自販機の選択に頼りたいと言う。

 8月からこのインテリジェント自販機の展開を開始したJR東日本ウォータービジネス(East Water Business Co)の笹川俊成(Toshinari Sasagawa)事業責任者によると、個人情報を保護するために、顧客の画像データはその場で消去されるが、性別と年齢、購入商品に関するデータは蓄積して商品構成や開発に生かすつもりだという。

 インテリジェント自販機は導入以降、同駅にある50台ある普通の自販機と比べ、3倍の売り上げをたたき出した。同社では今後2年間で、この次世代自販機をさらに500台まで増やす計画だ。

 将来は、自販機と人のコミュニケーションが増えるだろうと笹川氏は言う。同社では単に販売機から物を買うということとは違う、楽しい買い物体験をしてほしいと考えている。(c)AFP/Miwa Suzuki