【4月26日 AFP】メディア王ルパート・マードック(Rupert Murdoch)氏が所有するウォールストリート・ジャーナル(Wall Street JournalWSJ)は26日、ライバル紙ニューヨーク・タイムズ(New York TimesNYT)の牙城、ニューヨーク(New York)地域版をいよいよ発売する。購読者や広告主をめぐり、米有力紙2紙の直接対決の火ぶたが切って落とされる。

■1世紀にわたる独占状態、崩せるか

 ニューヨークの地域報道では、過去100年以上にわたり、サルツバーガー(Sulzberger)一族率いるNYTが圧倒的な地位を築いてきた。

 これに対しマードック氏は先月、全面カラー印刷で「活気にあふれた」WSJニューヨーク版を立ち上げると発表。「ジャーナリズム賞や全国的な評判にばかり気をとられたニューヨークの某紙は、かつてのような地元密着の報道を基本的に止めてしまった」と述べ、NYTに宣戦布告を行った。

 マードック氏は、WSJニューヨーク版は「ニューヨークを偉大にするあらゆる出来事を報道する。国政、地元政治、経済、文化、スポーツ、なんでもだ」と話している。

 実際、2007年にWSJの親会社である米新聞大手ダウ・ジョーンズ(Dow Jones)をバンクロフト(Bancroft)一族から50億ドル(約4700億円)で買収したマードック氏は、以来、経済専門紙だったWSJを徐々に一般紙に近づけることに取り組んできた。

 マードック氏のこうした挑戦的な姿勢は、同氏が率いるニューズ・コープ(News Corp)がこの数十年でメディア・エンタメ業界の有力企業に成長していく過程でよく見られた手法だ。ロンドン(London)のメディア戦争を制し、ニューヨークでもすでにタブロイド紙ニューヨーク・ポスト(New York Post)を率いてライバル紙デーリー・ニューズ(Daily News)と激しい競争を展開中。そんなマードック氏は、この新たな戦いと楽しんでいる節もある。

■真っ向から受けて立つとNYT

 一方、NYTの発行人であるアーサー・サルツバーガー(Arthur Sulzberger)氏は、この戦いからは距離を置いている。マードック氏の挑戦を受けて立ったのは、ジャネット・ロビンソン(Janet Robinso)社長兼最高経営責任者(CEO)だ。

 ロビンソン氏は先週、「先頭を走る犬に人々は付いていくものだ。それがWSJであろうと他紙であろうと関係ない。われわれは長年、数多くのライバルと競争してきた」と自負。「われわれは競争相手を恐れはしない。今までもそうだったし、これからも変わらない。戦い方は十分に心得ているし、実際、楽しんでいる」と述べ、真っ向から受けて立つ姿勢を強調した。(c)AFP/Chris Lefkow

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