【4月15日 AFP】世界の鉄道建設企業がかつて「金の鉱脈」と呼んだ中国が今、自国の鉄道整備の際に頼りにした各国の鉄道建設グループたちと、国際舞台でしのぎを削ろうとしている。

 すでにトルコとベネズエラの高速鉄道建設に進出している中国の鉄道省では、さらに北米、南米、欧州にも「中国の技術」を輸出したいと意気込んでいる。

 サウジアラビアではふたつの聖地メディナ(Medina)とメッカ(Mecca)を結ぶ高速鉄道建設の入札で、中国のコンソーシアムに敗れる可能性をさとった独シーメンス(Siemens)が、中国側に提携を申し入れたといわれている。

 外国企業の競争相手は個々の中国企業だけではない。鉄道セクター拡大に力を入れる中国政府が、国営企業に潤沢な資金を注入してもいると、調査会社IHSグローバル・インサイト(IHS Global Insight)のアナリスト、Ren Xianfang氏は解説する。

■国内にも広大な開拓市場

 中国の鉄道セクターを支えるもうひとつの強みは、国内にも広大な鉄道建設を計画している点だ。現在の鉄道路線は全長8万6000キロだが、政府は2020年までに12万キロに延長する構えで、うち40%は高速鉄道となる見込みが強い。先の12月には、営業運転速度としては世界最速の時速350キロで走る高速鉄道が武漢(Wuhan)-広州(Guangzhou)間に開通した。

「2、3年以内に世界の高速鉄道路線の半分は中国国内のものが占めるようになる」と運輸・建設セクター専門のコンサルティング会社クレビー・チャイナ(Clevy China)の創設者Frederic Campagnac氏は予測する。「現在世界で製造中の車両の大半を占めているのも中国。この分野はまだ完全には自動化されておらず、技術をもった人材が必要とされるが、中国は速いスピードでノウハウも身につけている」

 しかし高速鉄道に関しては依然、中国は外国からの技術移転を必要としていると、欧州の鉄道会社幹部は指摘する。先述のサウジアラビアでの例のように、中国と他国の連合事業では「中国が機械的部品の製造を低コストで引き受け、シーメンス側がハイテク、高性能といったイメージをもたらすのだろうとみんな想像するだろう。現在のところ、昔からあるパターンは変わっていない。つまり中国は自分が真似しやすいところは真似するが、システム全体の運営となると手に余ってしまう」

■他国企業は中国から締め出しの現状
 
 それでも鉄道セクターにおける中国を業界の巨人たち--独シーメンスやカナダのボンバルディア・トランスポーテーション(Bombardier Transportation)、仏アルストム(Alstom)などは急成長する手ごわい相手とみる。

 技術移転によって中国の高速鉄道路線6550キロの敷設に貢献した川崎重工業(Kawasaki Heavy Industries)も含め、彼らは現在みな中国市場の鉄道建設から締め出されようとしている。仏アルストム・トランスポール(Alstom Transport)のフィリップ・メリエール(Philippe Mellier)CEOは前年、締め出しは意図的だと非難し、中国製の鉄道車両を購入しないように各国に呼び掛けさえした。

 技術移転の際には通常、その技術の使用は中国国内のみに限定されることを明記した条項が交わされるが、中国は「全体の5%だけをいじって『再開発した』と言い張る」と鉄道会社幹部は非難する。

「市場のための技術」という企業戦略が賢い選択かどうか、判断に悩む局面だとRen氏も語る。「他の国の企業は自分たちの技術移転を通じて、実質的に競合相手を育ててきたわけなのだから、中国市場への参入でその見返りがなければおかしい」(c)AFP/Joelle Garrus