【3月31日 AFP】欧州での過去数年間にわたる過剰漁獲と漁船過多が、欧州連合(EU)の漁業補助金により促されたとする研究報告書が31日、発表された。

 この研究は、英国に拠点を置く漁業コンサルティング会社「ポセイドン・アクアティック・リソース(Poseidon Aquatic Resource)」と米非政府組織(NGO)「ピュー環境グループ(Pew Environment Group)」が、英国、デンマーク、フランス、スペインなど欧州10か国を対象に実施した。2000~2006年の欧州連合による補助金49億ユーロ(約6100億円)の大半がこの10か国に交付されている。

 ポセイドン社のコンサルタント、ティム・ハンティントン(Tim Huntingdon)氏は、「EUの漁業補助金と貴重な漁業資源の乱獲の間には明らかに関連がある」と述べた。

 報告書によると、EUの補助金のうち29%が、過剰漁獲の一因となる漁船の新造や近代化に交付された。一方、漁業の健全化のための廃船処理や一時的な漁獲規制に交付された補助金は全体の17%にすぎなかった。特にスペイン、フランス、ポルトガル、ドイツは、持続可能な漁業という観点からは「悪影響を及ぼす対策」に補助金の交付を受けていたという。

 2000~06年に補助金で新造された船舶は3000隻、近代化された船舶は8000隻に上った。一方、補助金により廃船処理されたのは6000隻のみで、しかもその大半がギリシャやイタリア沿岸の小型漁船だった。ピュー環境グループは、「EU漁業補助金は船舶過多を改善することに失敗する一方で、持続可能なレベルの2~3倍の漁獲を引き起こした」と述べた。

 この調査は、EUの漁業指導基金(Financial Instrument for Fisheries GuidanceFIFG)の資料をもとに作成された。


■現在は調査不可能に

 一方、近年、資金提供とその報告体制が変わったため、2007年以降の調査は実施不可能になったという。

 EUの補助金は、2007年以降、欧州漁業基金(European Fisheries FundEFF)を通じて交付されるように変わった。その結果、「透明性が無くなった」とピュー環境グループのマルクス・クニッゲ(Markus Knigge)氏は批判する。

 クニッゲ氏は、「(EFFが)より厳しい公開基準を設けているため、今回のような割当額に基づいた研究が不可能になった」と述べ、「市民には資金がどこに提供されたのかを知る権利がある」と批判した。(c)AFP