【2月4日 AFP】アフリカの石油にしか関心がないといわれることが多い中国はいま、エチオピアの首都アディスアベバ(Addis Ababa)で、今後数十年にわたってアフリカの政治の中心になるかもしれない大建造物を作っている。それも無料でだ。これまでに中国がこのような施設をアフリカに建てたことはなかった。

 2日閉幕したアフリカ連合(African UnionAU)の首脳会議のためアディスアベバを訪れていたアフリカ各国の指導者は、巨大な建物を作っている大勢の中国人労働者を目にしたことだろう。2年後の首脳会議はこの建物で開かれるはずだ。

「この建物は中国とアフリカが長期にわたる強い友好関係を持つという非常に強いメッセージです。このセンターは中国とアフリカの連帯の象徴なのです」と、プロジェクトを調整しているエチオピア政府のファンタフン・マイケル(Fantahun Michael)氏は語る。

■高さ100メートルの連帯の象徴

 あたりではヘルメットをかぶった数百人の中国人とエチオピア人の建設作業員と、表意文字が描かれた黄色い重機が53か国が加盟するAUの新本部の基礎工事を行っている。

「プロジェクトは2009年1月に始まりました。竣工は2011年12月の予定です。これは中国が設計し、中国が管理し、中国が資金を出し、中国が建設する中国からAUへの贈り物です」とマイケル氏は語る。「品質を保証するためAUも独自のチームを出しています。贈り物であっても、われわれが必要としていることについては口を出すのは当然のことでしょう」(マイケル氏)

 完成すれば約500のオフィスを持つ高さ100メートル、23階建てのアディスアベバで最も高いビルになる。2550人を収容できるカンファレンスセンターや大きな会議室、2つのヘリポートなどの施設も入る。

 同じ区画ではエチオピア随一の民間投資家であるモハメド・アムディ(Mohammed Al-Amoudi)氏によって、276室を持つ5つ星ホテルの建設も進められている。

 これらのプロジェクト全体で、早ければ2012年にはAUは定例首脳会議を自前で開催できるようになる。かつては国連(UN)の施設を借りて開催していた時期もあった。

■対アフリカ関係強化、中国の意図は

「われわれは中国との間でこれまでに総額1億2000万ドル(約110億円)の複数の契約を結んでいますが、総工費がいくらになるのかはまだ分かりません。これは贈り物なのであり、交換条件や担保などは一切ありません」(マイケル氏)

 世界第2位の経済大国になろうとしている中国がひも付きでないプロジェクトを気前よくアフリカに与えている姿は、植民地時代の西欧諸国をほうふつとさせるとして批判する声もある。

 中国政府は、エジプト・紅海(Red Sea)沿岸のリゾート地、シャルムエルシェイク(Sharm El-Sheikh)で前年11月に開催された「中国アフリカ協力フォーラム(Forum on China-Africa Cooperation)」で、今後3年間でアフリカの途上国に100億ドル(約9100億円)の低利融資を行うと約束した。

 中国は、アフリカのいくつかの国でアディスアベバで建設中のものと同様の施設の建設を進めている。

 人権やグッド・ガバナンスについてアフリカに上からの目線で講義するのではなく、アフリカを対等のパートナーとして扱っていると中国は主張している。中国はいまのところ経済を前面に出してアフリカと付き合っているが、その裏にどんな政治的な意図があるかわからないと指摘する声もある。

 2008年の中国とアフリカ間の貿易額は1070億ドル(約9兆7000億円)になり、それまでの10年間で10倍に拡大した。中国のアフリカ投資額は、国際的な大手金融機関のそれに匹敵する規模になっている。(c)AFP/Emmanuel Goujon