【10月19日 AFP】前週発表された米金融機関の決算が好調だったことを受け、専門家の間で金融機関幹部に支払われる見込みの巨額ボーナスに対して、米政府は微妙な舵取りが必要になってくるだろうとの見方が出ている。

 米有力シンクタンク、ブルッキングス研究所(Brookings Institution)のダグラス・エリオット(Douglas Elliott)氏はAFPに対し、報酬制限に米金融業界が強く反発したことに言及し、バラク・オバマ(Barack Obama)政権がこの問題を政治的により大きな問題にする方向に動けば、政権は自らが望まないことをせざるを得なくなるだろうと述べた。

 さらに、金融機関の改革を支援すると同時に、厳しい経済情勢に直面している国民感情をこれ以上さかなでしないよう、オバマ政権はこの問題にあまり多くの時間をかけたくはないはずだと指摘した。

 前週発表された金融機関の決算では、ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)やJPモルガン・チェース(JPMorgan Chase)、シティグループ(Citigroup)など米主要金融機関が市場予想を大幅に超える好業績を上げた。

 これに関連して、米ウォールストリート・ジャーナル(Wall Street Journal)紙は、米銀行・証券業界の上位23社が、ボーナスとして総額1400億ドル(約13兆円)の支払いを計画していると報じている。これは過去最高を記録した2007年を上回る金額だ。

 米ホワイトハウス(White House)のラーム・エマニュエル(Rahm Emanuel)大統領首席補佐官は18日、米CNNの番組で、巨額ボーナスに対する怒りは理解できるとし、銀行は金融システムの信頼回復にむけて重要な役割を果たすべきだと語った。

 しかし、金融業界関係者は異なる反応を示す。企業の労務管理や報酬に関する非営利団体、ワールドアットワーク(WorldatWork)のドン・リンドナー(Don Lindner)氏は、ゴールドマン・サックスなどの「厳しい経済状況下を乗り切りつつある企業が、報酬の問題で批判されるという傾向」に懸念を示している。

 リンドナー氏はまた、「報酬の支払い額に厳しいルールを課すことは、金融業界に壊滅的な打撃を与える危険なものだ」と語り、米政府が過剰にボーナス支払いに歯止めを掛けるようなことがあれば、金融機関は必要とする人材を確保できず、改革はとん挫してしまうだろうとの見方を示した。(c)AFP/Alex Ogle