【8月22日 AFP】ブラジルの次期戦闘機をめぐる商戦が激しさを増している。

 ブラジルは時代遅れのフランス製ミラージュ(Mirage)戦闘機12機の後継として、2014年から新しい戦闘機36機を配備する予定で、現在機種選定を進めている。

 約40億ドル(約3700億円)にのぼるとみられる契約をめぐりフランスのダッソー・アビアシオン(Dassault Aviation)、スウェーデンのサーブ(Saab)、米国のボーイング(Boeing)3社が激しいロビー活動を展開している。競争を勝ち抜いた戦闘機が今後約30年にわたりブラジルの空を守ることになる。

 当初は今年9月に選定結果が発表されるとみられていたが、ブラジル政府は3社に「信じられないほど細かい」(ある応札企業の関係者)技術的事項について問い合わせており、発表は早くとも10月以降になるとみられている。

■ラファールが先行、グリペンとスーパーホーネットも猛追

 これまでのところ最も有力視されているのはハイテク戦闘機『ラファール(Rafale)』を売り込むダッソーだ。ブラジルは技術開示を機種選定の重要な要件に挙げているが、同社は全ての技術をブラジルに開示すると保証している。

 しかし、『グリペン(Gripen)』を擁するサーブと、『F/A-18 スーパーホーネット(F/A-18 Super Hornet)』を擁するボーイングも劣勢を挽回しようと必死に追い上げている。

 前週サンパウロ(Sao Paulo)を訪れたボーイングのジェームズ・アルボー(James Albaugh)上級副社長は報道陣に対し、「前例のない」水準でブラジルと技術を共有することを認めるよう議会に要請していると語った。

■「シャンパンは契約書にサインしてから」

 サーブのオケ・スヴェンソン(Ake Svensson)社長も20日サンパウロで記者団に対し、ブラジルにグリペンの技術を供与するのはもちろん、将来においてブラジルがグリペンの輸出に関与し、利益を得る可能性にも言及した。

 ブラジルの選定結果は、約100億ドル(約9400億円)をかけて戦闘機126機を調達する計画のインドにも大きな影響を与えるのは必至だ。

 ブラジルは前年フランスとの間で、潜水艦4隻を購入し、原子力潜水艦1隻を共同開発することで合意した。ブラジルは急成長する経済力と地域大国としての政治的野心に見合う軍事力を整備しようとしている。

 ブラジルのメディアは、空軍は3機種の評価報告書を8月に政府に提出し、早ければ9月7日の独立記念日の式典で結果が発表されるのではないかと報じていた。式典には、意図的か偶然かは分からないが、フランスのニコラ・サルコジ(Nicolas Sarkozy)大統領も招待されている。しかし、上述の3社は空軍の報告書ができるのは9月以降だとしてそれぞれ最後の追い込みをかけている。

 ダッソーのブラジル事務所長はAFPの取材に、結果が出るまでにはまだ時間がかかると語り、「シャンパンの栓を抜くのは(契約書に)サインしてからにしよう」と語った。(c)AFP/Marc Burleigh