【7月25日 AFP】米国全土で、引き取り手のない遺体が遺体安置所に高く積み上がる一方で、墓地への埋葬は減少している。遺族が葬儀費用を削減していることが原因だ。米国を直撃する景気後退は、死者さえをも追い立てている。

 ロサンゼルス(Los Angeles)では、検視局によると、埋葬や火葬の費用が支払えないために遺体を引き取らない遺族が、かつてないほど急増しているという。

 ロサンゼルス郡検視局のクレイグ・ハービー(Craig Harvey)主任検視官は、AFPに対し「遺族が口にする理由は景気低迷」と述べ、「遺族らは、葬儀を行う費用が無いというんだ」と語った。

 殺人事件から不審死まで取り扱う検視局が、過去1年間で火葬を行った回数は前年と比較して36%増え、525回から712回に跳ね上がった。また、ロサンゼルス郡遺体安置所でも火葬の回数が25%増加した。

 通常は、遺族が遺体を1か月以内に引き取りに来なければ火葬が行われる。その後、遺灰は2-3年間保管されてから共同墓地に撒(ま)かれることになるという。

 遺体の引き取りには200ドル(約1万9000円)の費用がかかり、火葬が済んでいた場合には最大で452ドル(約4万3000円)かかる。

 全米葬儀社協会(NFDANational Funeral Directors Association)によると、私費で火葬を行った場合には最大で1000ドル(約9万5000円)の費用がかかる。また、葬儀の平均費用は約7300ドル(約70万円)だという。

 ハービー氏は、これまでにもカリフォルニア(California)州は幾度となく不況を経験してきたが、検視局と遺体安置所にこれほど深刻な影響を及ぼす不況は初めてだという。「経済危機は、考えていたより多くの人に打撃を与えたのだろう」

 とはいえ、米国の2007年の死者数240万人のうちの大多数は、従来通りに葬儀が行われた。しかし、葬儀の費用を節約する家族は増えているという。

 NFDAのジェシカ・コス(Jessica Koth)広報担当は、「09年に会員を対象に調査を行ったところ、家族たちが、景気低迷が原因で以前よりも安価な棺(ひつぎ)や骨つぼを選択していることが明確に示された」と語った。(c)AFP/Romain Raynaldy