【7月22日 AFP】世界の耕作地が不足し、食糧を増産する必要に迫られている国々がアフリカ大陸に目を向けるなか、かつて植民地化されていたこの大陸は対応を誤ると新たな被支配の時代に入る可能性があると、専門家らが警鐘を鳴らしている。

 その一方で、外国に広大な土地を貸し出すと、アフリカの食糧不足が解消されるとともにさらなる開発がもたらされると、期待を寄せる人々もいる。

■アジアの企業とリース契約

 2008年、韓国の物流企業・大宇ロジスティクス(Daewoo Logistics)はマダガスカルで、320万エーカー(約130万ヘクタール)の農地開発を行うための第一段階の承認を、マダガスカル政府から得たと発表した。しかし、この計画はその後、マダガスカルの政情不安が原因で撤回された。

 当初の合意では、同社はトウモロコシを年間400万トン、パーム油を年間50万トン生産する予定だった。

 ケニア政府は前年12月、カタール政府と土地のリース契約を結んだことを発表した。カタールから港や道路、鉄道などの建設に350万ドル(約3億2700万円)の投資を受ける見返りに、同国に10万エーカー(約4万ヘクタール)の土地を貸し出すという内容だ。

 中国・重慶(Chongqing)の種子会社「Chongqing Seed Corporation」は前年5月、穀物価格の世界的高騰に対処すべく、タンザニアの740エーカー(約300ヘクタール)の土地を借り受けてコメを栽培することを明らかにした。

 こうした動きについて、ある専門家は次のように危惧(きぐ)する。「投資をして技術を駆使することで、食糧生産高を上げることは可能だろうが、アフリカ人の雇用を創出することにはならないのではないか」

■アフリカ内部でも分かれる意見

 ところで、ケニアのムワイ・キバキ(Mwai Kibaki)大統領は、カタール政府とのリース契約を発表した数週間後に、国民約1000万人が食糧不足に直面しているとして国家の緊急事態を宣言し、4億ドル(約370億円)の対外援助を要請した。
 
 この契約について、ケニアのある弁護士は、カタール側が油田の権益の一部譲渡には一切触れていないことから、「不平等」なものだと批判する。

 国際食糧政策研究所(International Food Policy Research InstituteIFPRI)は4月の報告書で、「この乏しい資源の争奪に、これ以上の参入者が加われば、途上国の社会・政治的不安定化は助長されるだろう」と警鐘を鳴らしている。

 だがナイジェリアのあるエコノミストは、アフリカの多くの国でインフラが整備されておらず開発も遅れている点を挙げ、開発のための土地の貸し出しは成長の道筋をつけるものだと主張している。

■G8では土地取得規制の方針が示されたが・・・

 2002年の国連食糧農業機関(Food and Agriculture OrganisationFAO)の報告によると、アフリカの耕作可能な土地8億700万ヘクタールのうち、耕作が行われているのはわずか25%。

 一方で、大規模な農地開発には、生態系が破壊される恐れがあるとして、環境保護団体の目が光っている。

 今月初めにイタリアのラクイラ(L'aquila)で開催された主要国(G8)首脳会議(サミット)では、先進国側が、外国企業などによる途上国の土地取得を規制する計画を発表した。 

 これについて、食の権利に関する国連(UN)特別報告官のオリビエ・デシューター(Olivier De Schutter)氏は、「投資する側には何らの義務も課されない。数百万ヘクタールもの土地が、簡単な契約書のもと、タダ同然で売られている。こうしたことはすべて、人々に知られることなく行われている」と話している。(c)AFP/Otto Bakano