【7月7日 AFP】世界的な金融危機に対し無力だった主要国(G8)首脳会議は、世界経済に対する統制力をゆっくりと失いつつあり、さらに今度は会議自体の廃止さえもが呼びかけられている。

 主要8か国の英国、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、ロシア、米国は、前年9月に金融危機が発生して以降、方針の声明を発表する以上のことを行うことができなかった。そして難題の解決を、G8に中国やインド、アルゼンチン、ブラジル、南アフリカなどが加わった主要20か国・地域(G20)に受け渡してきた。ロンドンで4月に金融サミットを開催して金融危機に立ち向かったのは、G20だった。

 英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(London School of EconomicsLSE)の研究者、リチャード・ポルテス(Richard Portes)氏は、「知りうる範囲でいえば、長年にわたってG7とG8会議から実質的な結果は生まれていない」と語る。ポルテス氏は、「中国やインド、ブラジル、南アフリカを引き入れずに、環境や貿易、国際金融に取り組むことは不可能」と述べる。

 米カリフォルニア州立大学バークレー校(University of California at Berkeley)のBarry Echengreen氏も、「世界最大の外貨準備高の国(中国)が関与することなく、国際通貨システム改革が実行可能だという考えは、ばかげている」と語る。

 ドイツのアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)首相も、G8体制に疑問を投げかけている。メルケル首相は前週、「われわれが直面している問題は、もはや先進国だけで解決することが不可能だ」と述べていた。

 G8の数少ない擁護者、カナダのトロント大学(University of Toronto)のジョン・カートン(John Kirton)氏は、G8には「果たすべき重要な役割がある」と反論する。カートン氏は、「G20首脳会議は、基本的に、G7とG8が設定した原則や方針に従っているだけ」と述べる。

 とはいえ、国際情勢の専門家らの大半は、G8の終わりは近いとみている。

 インド国際経済関係研究所(Indian Council for Research on International Economic RelationsICRIER)のRajiv Kumar氏は、「G20を存続させ機能させたいのなら、この2つ(G8とG20)は共存できない」と語る。

 スイス、ジュネーブ(Geneva)にある国際関係大学院研究所(Institut de Hautes Etudes Internationales)のCharles Wyplosz氏も同様の考えだ。Wyplosz氏は、「G8を終わらせる準備をしなければならない。G8がG20に主要な問題を受け渡した以上、この小規模グループを維持してゆくことには基本的な矛盾がある」と語った。(c)AFP/Jeremy Tordjman