【2月15日 AFP】景気は後退。金融システムはぼろぼろ。政府は巨額の財政支出で危機からの脱出を模索。こんな状況に覚えがあるかと聞かれれば「イエス」と答える国がある。日本だ。

 米政府は景気後退の悪化と長期化を防ぐため数千億ドル規模の景気対策を準備しているが、日本経済の専門家は、日本の経験から、財政支出拡大によって「痛み」が和らぐ可能性はあると指摘する。

 豪マッコーリー証券(Macquarie Securities)東京支店のチーフエコノミスト、リチャード・ジェラム(Richard Jerram)氏は、「一般的に金融刺激策はかなり効果的だといえる」と語る。しかし日本では、財政出動は無駄な事業に使われることが多かったうえ、政府が銀行セクターの問題に取り組むのが遅れたと指摘する。さらに日本政府は景気回復の兆しがみえるたびに対策の手を緩めてしまった。

 米国にとって真の問題は、「金融システムの改善に決意を持って取り組めるかどうかだ」とジェラム氏は語る。経済が好転すると金融機関の問題も改善したかのように見えるかもしれないが、銀行の問題が本当に解決しないかぎり、「金融刺激策の勢いがなくなると同時に金融問題は再び悪化する」と忠告する。

■「魔法の杖」ではないが一定の効果

 日本は巨額を投じた橋梁(きょうりょう)、ダム、高速道路、会議施設などで溢れている。これこそアジア最大の経済大国が景気後退から脱却しようとした取り組みの遺産だ。

 全労働者の1割が建設業界で働く日本では、90年代前半に膨大な公的資金がインフラ整備に投入された。

 巨額の公共投資が景気に与えた影響については現在でも意見が分かれている。米JPモルガン証券(JP Morgan Securities)の菅野雅明(Masaaki Kanno)氏は、財政出動による公共事業は「魔法の杖」ではなかったかもしれないが、衝撃を吸収するクッションの役割は果たしたと考えている。

 菅野氏は、90年代に日本から得られた第1の教訓として公共事業に経済への浮揚効果が認めらることを挙げている。ただし第2の教訓として景気刺激策による景気回復は非常に不安定で、経済が二番底へ転落することもありえると指摘する。

■消費税増税で景気後退まねく

 財政赤字拡大を阻止するため1997年に消費税がそれまでの3%から5%に引き上げられたことをきっかけに、日本の景気は再び急速に後退してしまった。この結果、日銀(Bank of Japan)は金利を引き下げ、政府は最終的に金融機関への公的資金投入を迫られることになった。多くの専門家はこの救済策は十分に練り上げられていなかった上、遅すぎたと述べている。

 経済が回復基調に乗った00年代半ばには、構造改革を掲げた小泉純一郎(Junichiro Koizumi)首相ら歴代首相が、肥大した公共事業予算の削減に動いた。

 しかし、多くの地方は雇用を公共事業に頼っていることから公共事業予算の削減は地方自治体はもちろん、与党・自民党(Liberal Democratic PartyLDP)内部から抵抗を受けることも珍しくなかった。半世紀にわたって政権の座にあった自民党はいま、今後もその立場を維持できるのか瀬戸際に立たされている。

 菅野氏は、公共事業に関連した利益団体が形成されてしまうと公共事業を中止することは非常に困難になると述べ、米国にはこの点に留意して欲しいと語った。(c)AFP/Daniel Rook