【2月14日 AFP】失業率上昇と景気後退に苦しむ英国で13日、75億ポンド(約1兆円)規模の都市間高速鉄道車両の製造・保守事業に関する優先交渉権を、日立製作所(Hitachi)が参加する共同出資会社が英運輸省から獲得したことについて、一部メディアや反対派から怒りの声が起きている。

 日立製作所は12日、英大手ゼネコンのジョン・レイン(John Laing)および英バークレイズ・グループ(Barclays)と共同で、英運輸省から都市間高速鉄道車両の製造・保守事業に関する優先交渉権を獲得した。

 共同出資会社「アジリティ・トレインズ(Agility Trains)」が、ロンドン(London)と西部を結ぶグレート・ウエスタン本線(Great Western Main Line)、およびロンドンと北部を結ぶイースト・コースト本線(East Coast Main Line)に「超高速列車」を供給することになる。

 入札に敗北したカナダ、独、英の企業による共同出資会社は、この決定に「非常に残念」とする声明を発表した。

 英大衆紙デーリー・エクスプレス(Daily Express)は「Fury as Japan gets our jobs(日本が職を奪うことに怒り)」との見出しで記事を一面に掲載。「英国人労働者のための英国の雇用」を保護するとのゴードン・ブラウン(Gordon Brown)英首相の発言との対比を強調した。

 アジリティ社によると、金額ベースで全契約の70%は英国内で行われ、2500人以上の雇用が生まれるという。ジェフ・フーン(Geoff Hoon)運輸相もまた、関連して新たに約1万2500人の雇用が創設されるとの見方を示した。

 これに対し、この数字に疑問を投げかける反対派や一部メディアは、日立が山口県笠戸に持つ鉄道車両工場で契約の大部分が行われるとの懸念を示した。

 一方、20-30年間運行してきた現在の高速鉄道車両を置き換える計画に日本企業が参加することについて、同国メディアは批判的な論調一色となったわけではない。

 タイムズ(Times)の論評解説は日本の新幹線にも言及し、「この高速鉄道車両は最上であり、乗客は恩恵を受けることになる。堪能すべき時が来た。英国の乗客は、安物のくたびれた列車での移動から、最高の列車で旅することになる」と述べている。

 英国政府の発表によると、同国の失業者数は増加の一途をたどり、現在2百万人目前となっている。(c)AFP