【2月9日 AFP】世界的な景気後退が進む中、各国の労働者らが賃金の安い外国人労働者たちを敵視する傾向が高まっており、暴力事件や極右政党の台頭につながる危険があるとアナリストや組合関係者が警鐘を鳴らしている。

 英国では外国人労働者の受け入れに抗議するストライキが起き、フランスでは自動車産業への融資をめぐって保護主義がちらつき始めた。加盟国間の労働者の移動と貿易の自由化を進めてきた欧州連合(EU)の黄金律の真価が問われている。

 アラブ首長国連邦の建設現場やマレーシアの工場など、世界各地でも労働者たちが自分の立場が脅威にさらされているとの自覚を強めている。

■高まる反発、身の危険感じる労働者も

 前月、英国北東部イミンガム(Immingham)のリンゼー石油精製所で行われた非認可ストライキは、イタリア人やポルトガル人の契約労働者の雇用に抗議するものだった。

 EU各国の企業の経営者らが労使紛争の激化に身構える中、ストライキは全英20か所の石油・ガス精製所に飛び火。新規雇用の半数を英国人労働者に割り当てるとの妥協案により、ようやく収束した。

 身の安全に不安を感じた一部のポルトガル人労働者は、帰国。彼らは、英国人の同僚から人種差別を受けたと主張している。

■各国で保護主義が台頭

 一方、フランスでは自動車業界への融資計画をめぐって、外国に新規に工場を建設するメーカーを融資枠から外すとニコラ・サルコジ(Nicolas Sarkozy)大統領が発言した。

 米国では、失業率の上昇に伴って、技術力の高い外国人労働者の流入に対する反感が高まり、反移民団体が就労ビザの発行中止を求めるテレビコマーシャルを流した。

 マレーシアは、工場での外国人労働者の雇用を禁止する措置を取った。

■極右思想に対抗できるかは政府次第

 こうした中、労働組合側は、人種差別思想を持った組織が雇用の不足に便乗し、労働力の輸入に対する反発を煽る目的で、労働運動を乗っ取ろうとしているとの懸念を表明している。

 歴史的に見て、不況時には、特に失業率が高い地域で、極右組織が支持を獲得する傾向がある。大恐慌時の1930年代には、欧州でファシズムが強固な支持を築いた。 

 こうした極右勢力は、地元労働者の不満を移民への敵対意識につなげ、時には襲撃を扇動することもある。ドイツのイエナ大学(Jena University)の社会学者、クラウス・デーレ(Klaus Doerre)教授は、「極右組織が外国人労働者問題に乗じて勢力を広げるのを防げるかどうかは、政権与党の手腕にかかっている」と話している。(c)AFP