【12月14日 AFP】中国の過去30年間は、これからの数十年間、沿岸部に巨大未来都市を生み出すための種をまいてきた時代だったと言えそうだ。

 次の30年間で中国の都市部の人口は10億人を超え、経済大国の頂点に立つだろうとみられている。次の30年間にどのような改革が待ち構えているのかは分からないが、都市部での公害汚染と人口移動の波が予想される点は、多くの専門家の意見が一致するところで、都市化計画は大きな課題だ。

■人口10億に必要な革新的なインフラや治安対策

The Extreme Future(究極の未来)』の著者である未来学者のジェームズ・カントン(James Canton)氏は「次の30年は中国にとって、人口問題と都市化に取り組む重要な時期」だと予測する。

 コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニー(McKinsey & Company)によると、2005年に5億7200万人だった中国都市部の人口は、2025年までに9億2600万人に、2030年には10億人に達する見込みだ。

 また今後20年間で、ニューヨーク(New York)の高層ビルの数の約10倍に匹敵する2万棟から5万棟の高層ビルが建設されるという。そして2025年までに170の都市で、巨大な公共輸送網が必要となる。この数は現在の欧州の都市交通網の2倍以上だ。

 カントン氏は、中国の都市は生産力を活用して、ナノテクノロジーやスマート材料、最新の製薬といった製品の技術革新の中心地となるだろうとみる。また世界で最も中産階級の多い都市にもなるという。

 しかし、10億人を超える人々を住まわせるためには、まったく新しい形態のインフラや治安の枠組みを作ることが必要となるとも指摘する。「誰かしらにノーを言うことが基本とならざるを得ない。生体認証が発達し、なかには入ることさえできない都市も出てくるだろう」。人口、経済、環境問題になどからかかる圧力で、中国は革新的な解決方法を選ばざるを得なくなるというのが、カントン氏の見方だ。


■建築コンセプトの大変更で景観が一変

 経済学者で都市プランナーのスタンリー・イップ(Stanley Yip)氏は、英総合エンジニアリング企業アラップ(Arup)が中国政府の意向で各都市で進める環境都市の実験プロジェクトを率い、すでに中国の次世代都市の構想に着手している。

 イップ氏によると、将来の中国の建築や設計は、すべての新規建築物にエネルギー使用の半減を義務付ける、2010年末までに成立予定の新法に完全に従うことになる。

 法の要件を満たすためには建築物は必要最低限の設備だけに絞り、自然光があふれる設計にし、寒冷地帯の北部では断熱を強化し、逆に南部では開放性と換気性を増す必要がある。また太陽電池パネルはさらに一般的に普及するだろう。こうして設計が変化すると、建物の外観や雰囲気もずっと変わるとイップ氏は言う。

■2038年には中国が世界経済のトップに
 
 米国家情報会議(National Intelligence CouncilNIC)によると、中国経済は2025年までに日本を抜いて、世界第2位に躍り出ると予想されている。NICは最新報告に、次の15-20年間、中国以上に影響力を持つ国はないだろうと記した。

 一方、英ノッティンガム大学(University of Nottingham)現代中国研究所(School of Contemporary Chinese Studies)のYao Shujie教授は、中国経済は2038年には世界最大となるが、大半の国民の収入は依然、欧米に大きく遅れを取るだろうとみる。「平等性と社会正義、環境などの点では、過去30年には大した成果がなく、政治改革も遅々たるものだった。次の30年に課題となってくるのは、これらの分野だろう」(c)AFP/D'Arcy Doran