【12月9日 AFP】仏ワインの名産地ボルドー(Bordeaux)で4日まで開催されていたフランス最大のワイン産業展「ビニテック(Vinitech)」では、気候変動や経済不況への対応に迫られるワイン産業の現状が反映され、ソーラーパネル(太陽光発電)からインテリジェント機能付きワイン樽など、革新的なアイデアが登場した。

「実際のところ、金融危機のおかげで人間はより賢くなった」と、ワイン樽の代替用オーク(樫)チップを生産するパトリック・デュクルノー(Patrick Ducournau)氏は語る。
 
 醸造中のワインにオークチップを浸す画期的な手法は、オークチップは低価格であることから、樽にワインを詰めて熟成させる従来の方法よりも、コストを大幅に抑えられる。

「最近の人びとは新しい手法に積極的で、高ければ良いという認識ではないことが、わたしたちには追い風となっている」と語るデュクルノー氏。チリのワインメーカーからの注文は、50%も増えているという。

 一方、除草剤の価格が3倍にも高騰している事情を反映し、元来は無農薬農業用に作られた除草用のクマデも、人気をよんでいる。

「ビニテック」共催者のFrederic Espugne氏は、こうしたワイン産業におけるエコ対策の高まりを「金融危機の好ましい副作用」とみる。同氏によると、生産過程の低コスト化と買い手を引きつける環境に優しい技術が、今年の同産業展の2大特徴だという。

 その一例が、「ビニテック」に初めてソーラーパネルメーカーが出展したことだ。

 同展に出展したソーラーパネルメーカー「Sunnoco」は、金融危機の影響による貸し渋りの影響は大きいが、すでにワイン製造業者2社が顧客となっており、今後、ワイン業界からの発注はさらに増えるとみている。

 一方、懐に余裕のあるメーカーは豪華嗜好の高級品で、買い手を引きつけようとの方針だ。

 イタリアのワイン樽製造業者は、ギリシャのワインメーカーからの注文で、オーナー夫人の肖像画入りの特注ワイン樽を1000ユーロ(約12万円)で製造した。

 また、仏ワイン樽メーカー、ラドゥー(Radoux)は、素材には高級木材を使用し、キャップ部分のコルクは高級クリスタルメーカー「スワロフスキー(Swarovski)」製、本体部にはレザーベルトをあしらった限定ワイン樽を出品。通常のワイン樽の倍額の1150ユーロ(約13万7000円)という高価格ながら、6月以来、15件の注文があったという。

 ラドゥーの関係者は、「不況の最中に高級ワイン樽を製造することに迷いはあったが、まだ余裕のある消費者はこうした高級品を求めるだろうと考えた」と語っている。

 主催者によると、今年の「ビニテック」には、これまでに前回2006年の3万8000人をやや上回る4万人弱が来場しているという。(c)AFP/Sophie Kevany