【10月19日 AFP】株式が急落し銀行が破たんするなか小躍りして喜んでいる男性がいる。英ロンドン(London)で「空売りの王様(King of the short sellers)」の異名をとる個人投資家、サイモン・コークウェル(Simon Cawkwell)氏(61)は、今月仕掛けたある空売りでは、わずか30分ほどの間に25万ポンド(約4400万円)の売買益を得た。

 満面の笑みを浮かべるコークウェル氏は、「危機に愛情を感じる。危機の場面では大勢が間抜けになる。値動きの早い市場で愚か者は間違いを重ね、私は利益を得る」と話す。

 ロンドン中心部にほど近い高所得層の多いサウスケンジントン(South Kensington)に豪華な調度品をあつらえた住居兼オフィスを構えるコークウェル氏は、4台のコンピューター・ディスプレイが映し出す株価を見ながら自信を持って決断を下す。「今年は300万ポンド(約5億3000万円)稼ぐことになるだろう」とつぶやいた。

 体格が大きく、「自分は99%の市場参加者より知的に優れていると想定してトレードを行っている。わたしは短時間に注意深く考えるが、愚か者はパニックに陥る」と話すコークウェル氏には、本人も認めるように謙虚な人物ではない。

 空売りとは、買った株ではなく手数料を払って借りた株式を売り、値が下がったところで買い戻して利益を得る手法で、主にヘッジファンドなどの投資家が用いる。株式市場の乱高下の原因として、これまでしばしばやり玉に挙げられてきた。

 英金融当局が金融株など約30銘柄について空売りの禁止措置を発表すると、コークウェル氏は他の銘柄に空売りを仕掛けた。

 コークウェル氏は今後の先行きについて、「高失業率、貧困の拡大、そして企業倒産の増加が予想される。生活が破たんした市民の増加は深刻な社会的動揺を招く」と悲観的な見方をする。一方でコークウェル氏は、仮に最悪の事態となれば「私は大きな利益を得ることになる」と豪語した。(c)AFP/Loic Vennin