【10月13日 AFP】オレンジ色のポルシェの横にたたずむエヴゲーニイ・チチヴァルキン(Yevgeny Chichvarkin)氏(34)は、ロシア小売業界の革命児ともてはやされてきた。だが、今は世界的な金融危機で「失われた財産」を思い、しょげ返っている。

 同氏が創業したロシアの携帯販売最大手Euroset社は、低利金融の波に乗り、7年間で急成長。5店舗から5000店舗まで店舗数を拡大し、年間売上高は30億ドル(約3000億円)にのぼる。
 
 だが9月に金融市場が冷え込み、銀行が貸し渋りに走ると、結局チチヴァルキン氏は同社を時価総額の5分の1で売却に追い込まれた。金融危機の前に売却しておけばと悔やまれる。

 信用収縮の結果、ロシアの富裕層は資産総額数千億ドルを失い、ハイパーキャピタリズムも停止した。原油高による好景気の恩恵に浴してきた新興財閥も、ここ数週間、過去最高を記録した5月から60%も下落した株価の落ち込みで、莫大な損失を被っている。

 モスクワの超高層ビル建設業界の首領、セルゲイ・ポロンスキー(Sergei Polonsky)氏は、「もはや、新しいビルを建てる余裕はない」とあきらめ顔だ。

 米経済誌「フォーブス(Forbes)」の2008年世界長者番付でロシア人のトップに立ったロシア・アルミニウム(Russian Aluminum)のオレグ・デリパスカ(Oleg Deripaska)社長でさえ、資産の売却を開始せざるをえない状況に追い込まれている。

 フォーブス誌(ロシア版)は4月、ロシアの億万長者数が前年比ほぼ倍増の110人に達したと報じ、ロシア富裕層の拡大が改めて印象づけられた。しかし、あるアナリストは、金融危機の余波で2009年の長者番付にランクインするロシア人は激減すると予想している。(c)AFP