【8月8日 IDO Securities】ECBは7日(木)に開催した定例理事会で、現行政策金利(4.25%)の据え置きを決定。その後行われたトリシェ総裁の会見・声明を受けて、ユーロは一段安となっている。GDP見通しについて、第2、第3四半期ともに軟化するとの見方が示されたことに加え、「景気減速リスクが現実のものとなりつつある」とするトリシェ総裁発言が材料視された。7月以降、ユーロ圏経済が失速していることを示す経済統計が相次いでおり、米経済の悪さはある程度、織り込み済み、市場が欧州圏の経済の悪さを織り込み始めた印象だ。ECBは景気判断の下方修正を示唆する一方、中期的な物価安定へのリスクは更に高まっているとの判断を維持しており、政策金利の変更は見送られる公算だが、一時期追加利上げ観測が強まっていたが故に、据え置き判断そのものが、ユーロ圏経済の後退リスクや、米国と比べた相対的な景気判断の下方修正度合いを嫌気し、ユーロドルの支持線であった1.53水準の攻防に焦点が移行している状況だ。
 ユーロ売りに伴いドル円も上昇が続いているが、現在のドルの上昇は、米国以外の主要国の景況感、金利見通しが相対的にドルにとってポジティブな方向に変化していること、原油下落を受けたインフレ期待の低下による米実質金利の上昇が主因で、米国自身の景況感の大幅な改善に支えられたものではない点には注意したい。米国以外の主要国の景況感悪化を織り込み、原油下落が一巡すれば、ドルの上値も抑えられる可能性も。
 米海洋大気局(NOAA)は7日、2008年に大西洋で発生するハリケーンの数が、5月予想よりも多くなり、最高10回となる可能性があるとの見通し(熱帯性暴風雨は14―18回、うちハリケーンに発達するのは7―10回、さらに「大型」に分類されるのは3―6回となると予想)を示しており、あと1ヶ月ほどは、ハリケーンリスクによる原油上昇リスクは残る。
 また、87年以降を見ると「8月の円高傾向」が確認される。8月が米国債の四半期入札月であることがその一因だが、特に、日米政策金利差が2%以下の時は、その確率は高まっている。

(投資情報部 菊川弘之)
NPO法人日本テクニカルアナリスト協会検定会員(CFTe)ラジオNIKKEI(北浜流一郎・菊川弘之の朝一投資大学)をはじめ、時事通信等でアナリストの目、テクニカル分析情報を掲載。ブルームバーグTV、日経CNBCなど多数のメディアにも出演中。商品先物関係のアナリストとして著名だが、日経平均先物オプション取引や外国為替取引の分析でも定評がある。

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