【7月25日 AFP】経済の基盤を輸出に頼るアジア各国では、米ドルの下落に伴う自国通貨の上昇で輸出競争力が低下するとの懸念が広がる一方、現在の米ドルは依然過大評価されているとする最新調査結果が発表された。

 米ワシントンD.C.(Washington D.C.)を拠点とするピーターソン国際経済研究所(Peterson Institute for International Economics)が発表した報告書「New estimates of fundamental equilibrium exchange rates(基礎的均衡為替レートに関する新たな考察)」によると、対米ドルで中国元は約30%、日本円は約20%、現在よりも実質的為替価値は高いとしている。

 また、アジア各国通貨の対ドル為替レートが上昇すれば、貿易加重平均を中国元で20%以下、円については5%以下と、理想的な数値に抑えることができるとした。また、通貨引き上げの重要度が高いアジア通貨として、シンガポールドル、中国元、マレーシアリンギット、新台湾ドル、円を挙げている。

 報告書の作成に関わったのは、財務省高官と国際金融研究所(Institute of International Finance)の主席エコノミストを経験したウィリアム・クライン(William Cline)氏と、世界銀行(World Bank)および国際通貨基金(International Monetary Fund)での勤務経験を持つジョン・ウィリアムソン(John Williamson)氏。

 報告書は「ユーロ、英ポンド、カナダドルなどの欧米先進国通貨に対するドル為替レートに比べ、対ドルのアジア通貨レートは過小評価され過ぎている」とし、「長期にわたった欧米主要3通貨に対するドル優位の時代は終わった」とまとめた。

 輸出主導型のアジア経済においては、一般的に自国通貨の上昇は、アジア圏内のライバル国との輸出競争で不利となり、経済成長の衰退を招く懸念材料と考えられている。

 最近の原油および食糧価格の急騰が招いたインフレ懸念が高まるなか、アジア各国の中央銀行は、自国為替レートの制御に苦慮していると専門家は指摘する。(c)AFP/P. Parameswaran