【6月23日 AFP】信用力の低い個人向け(サブプライム)住宅ローン問題に端を発する金融市場の混乱で世界的な信用収縮が発生して、まもなく1年を迎える。エコノミストらは、サブプライム問題の直撃を受けた米住宅市場や金融機関が最悪の状況を抜け出たサインを探しているが、見解は割れている。

 米連邦準備制度理事会(Federal Reserve BoardFRB)のベン・バーナンキ(Ben Bernanke)議長は今月、米経済が深刻な景気後退に見舞われる「リスクは小さくなってきた」との見方を示した。ヘンリー・ポールソン(Henry Paulson)米財務長官も前月、「金融市場の混乱は、始まりというよりは終わりに近づいている」と述べ、危機が去りつつあると指摘した。

■サブプライム問題に揺れた2007年

 サブプライム問題の根は長年にわたって信用基準が緩和されてきたことにあるが、問題が表面化したのは、2007年1月ごろから、固定金利から変動金利への移行で借り手の返済が困難になる例が急増したためだ。

 住宅ローンの焦げ付きが相次ぎ、不動産担保証券をめぐって投資銀行やヘッジファンドがばく大な損失を計上し始める。100億ドル以上の損失を発表した英HSBCに始まり、米シティグループ(Citigroup)、スイスUBS、米メリルリンチ(Merrill Lynch)、ベア・スターンズ(Bear Stearns)などが次々と損失計上を発表した。

 7月10日には、米格付け機関スタンダード&プアーズ(Standard and Poor's)とムーディーズ(Moody's)が120億ドル超のサブプライム関連債券の格付けを引き下げ、金融危機が加速。ベア・スターンズや米住宅ローン大手カントリーワイド・フィナンシャル(Countrywide Financial)が破たん寸前まで追い詰められた。

 信用不安から株価が急落、FRBは8月17日に公定歩合を引き下げると、その後も金利引き下げを重ねていく。

■損失額は世界規模で9000億ドル超

 仏ソシエテ・ジェネラル(Societe Generale)のエコノミスト、スティーブン・ギャラガー(Stephen Gallagher)氏によると、サブプライム問題が表面化して以来の大手金融機関の損失は約4000億ドル、資本注入は約3000億ドルに上っており、今後の見通しは不透明だという。

 また国際通貨基金(International Monetary FundIMF)は4月、サブプライム問題をめぐる世界規模での損失は、9450億ドルに上る可能性があると指摘している。

 米住宅価格は依然として下落しており、住宅着工数もこの17年で最低に落ち込んでいる。

■回復にはまだ時間が必要と専門家

 米ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)のエコノミスト、エド・マッケルヴィー(Ed McKelvey)氏は、米住宅市場はL字型の回復をするだろうと見ており、本格的な回復までにはまだしばらく時間がかかるとの立場だ。

 ナロフ・エコノミック・アドバイザーズ(Naroff Economic Advisors)のジョエル・ナロフ(Joel Naroff)氏のように、危機は弱まったがより広範囲の経済問題が原因で失業率が高まり、信用収縮が他のローン商品に拡大する危険を指摘する声もある。

 ナロフ氏は、結論を出すのは「まだ早い」と述べ、「(危機の)終わりが近づいているという点には同意するが、だからといってこの先に落とし穴がないということにはならない」と警鐘を鳴らしている。(c)AFP/Rob Lever