【6月12日 AFP】パレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)に住むラマダン・アシュラム(Ramadan al-Ashram)さんは、毎朝欠かさず、経営するセメント会社に出勤し、旧式の黒電話とラジオが置いてあるデスクに腰を下ろす。そして――家に帰るまでの時間を数え始める。

 アシュラムさんは「(イスラエルに)封鎖されているおかげでセメントが入ってこない。この1年、まったく仕事がない状態だよ」とため息をつく。

 イスラエルは、前年6月15日にイスラム原理主義組織ハマス(Hamas)がマフムード・アッバス(Mahmud Abbas)自治政府議長を支持するファタハ(Fatah)を追放し実権を掌握したことを受け、ガザ地区封鎖を続けている。このため、同地区内での建設工事は行き詰まっている状態だ。

 ガザ地区とイスラエルの境界は完全に封鎖され、物資の輸出入が行われていた唯一のチェックポイントのカルニ(Karni)検問所も閉鎖されたままだ。ガザ地区の経済は、破たんした状態だといえる。

「うちの会社には40人の従業員が働いていたけど、みんな失業だよ。これからも仕事はないさ。ガザで建設中の建物なんて1つもない」(アシュラムさん)

 ガザ地区の、家具の製造や繊維業、農業の主要産業部門のほとんどはイスラエル向けで、封鎖によって輸出がストップしている今となっては、同地区は援助だけで生き延びている状態だ。

 パレスチナの企業団体「PalTradePalestinian Trade Centre)」によると、同地区産業の主要3部門で3億ドル(約320億円)以上のばく大な損失を被っているという。以前は、建設部門だけでも4万人の労働者を雇用していたという。

 3つの家具製造工場を経営しているアラー・アムシ(Alaa al-Amsi)さんは「ガザの経済はイスラエル頼りなんだ。封鎖が解除されなければ、われわれは真綿で首を絞められながら死んでいくようなものだ」と語る。アムシさんの工場はひっそりと静まりかえっていた。雇用していた25人の従業員は全員解雇したという。

 国際労働機関(International Labour OrganizationILO)の統計によると、ガザ地区の失業率は29.8%という記録的な水準に達している。なかでも20-24歳の若年層の失業率は37%と非常に高い。また南部ハンユニス(Khan Yunes)の失業率は39%に達している。

「金を持っている企業家は、ガザ地域を後にしてエジプトや湾岸地域に行ってしまった。彼らなしでどうやってパレスチナ国家を建設するっていうんだ」(アムシさん)(c)AFP/Mehdi Lebouachera