【3月10日 AFP】金融業者から不動産仲介業、自動車販売のセールスマンまでが米国経済の沈滞に悩まされている中、刑務所を運営する矯正施設企業だけは膨れ上がる受刑者数の恩恵を受けている。

■増え続ける収監者、矯正施設は建設ラッシュ

 米国の収監者数は世界で最も多く、政府統計によると2006年には前年比3%増の230万人に達した。厳罰方針により拘置所、刑務所に収監される人数が増える中、コレクションズ・コーポレーション・オブ・アメリカ(Corrections Corporation of AmericaCCA)やGEOグループ(GEO Group)といった民間の矯正施設運営企業は競って施設を新設したり、重罪犯の収容能力を強化するため既存の刑務所を増築している。

 米国最大の矯正施設運営企業CCAは、アリゾナ(Arizona)州エロイ(Eloy)に総額2億500万ドル(約210億円)をかけて定員3060人の収容施設を新設しているほか、ミシシッピ(Mississippi)州ナチェズ(Natchez)には建設費1億500万ドル(約110億円)、定員1668人の収容施設を建設中だ。

「どの州でも矯正施設は満員状態なのに、収容者は増え続けている。各自治体はベッドなどの備品を自ら購入するよりも、CCAのような民間の矯正施設業者のほうが迅速かつ、より安く手配できることに気付きだした」と、CCAのジョン・ファーガソン(John Ferguson)最高経営責任者はAFPのメール・インタビューに答えた。

■景気後退懸念よそに運営企業は収益拡大

 2007年の第4四半期、CCAの利益は前年同期の3200万ドル(約32億6500万円)から3500万ドル(約35億7000万円)に拡大。総収益は3億8200万ドル(約390億円)まで跳ね上がった。

 一方GEOグループのGeorge Zoley最高責任者は2月、専門家らとの電話会議で、2007年は空前の「当たり年」だったと述べた。また新施設が収容者で埋まっていく2008年、事業はさらに成長するだろうと予測した。同社広報は詳細な事業報告を発表していないが、2007年の第4四半期中には1150万ドル(約11億8000万円)の利益を上げ、10%の増益となった。

 米司法統計局(Bureau of Justice Statistics)によると、連邦および州の収容施設のうち、民間業者が管理運営する施設には10万人が収監されており、今後も増加が見込まれている。

■厳罰化進み収監者増加

 米国の収監者人口が膨れ上がっている理由として弁護士で作る団体などは、犯罪発生率が上がったためではなく「麻薬との戦い」の影響や、刑法の厳罰化を原因にあげている。収監者の大半は、人種的・民族的マイノリティが占めるという。

 公正で効果の高い刑事司法制度を目指し、刑法改善推進団体「The Sentencing Project」の政策アナリスト、ライアン・キング(Ryan King)氏は1970年以降、判決の厳罰化と仮釈放や執行猶予の減少により、米国の収監者人口は6倍になったと指摘している。(c)AFP/Justin Cole