【12月26日 AFP】米インターネット・オークションサイト、イーベイ(Ebay)が、世界の貧困層の起業家に対する融資を促進し、投資家に利潤も還元するマイクロレンディング(小規模貸付)専用ウェブサイト、「Microplace.com」の運営を開始した。

 発展途上国の人々に無利子融資を行うマイクロファイナンス(小規模金融)とは異なり「Microplace.com」では、より良い生活を目指す人々を支援したい投資家に対し、利潤を還元する。同サイトの創始者トレーシー・ターナー(Tracey Turner)氏はいう。

「世界のワーキングプア(低収入労働者)に実際に投資し、そこから利益を還元するのは今までにない試み。利益が得られれば、より多くの人に投資することもでき、好循環が生まれる」(ターナー氏)

■少額資金で根本的な生活変化も

「マイクロプレイス(MicroPlace)」の事業に関するターナー氏の発想が形作られ始めたのは2005年。ケニアで3児を育てるシングルマザーの家庭に滞在したことがきっかけだった。ケニア人の母親は借金した100ドルでミシンを購入し、地元の子どもたちに学校用の制服を作る在宅ビジネスを始めた。女性は借金を返済し、息子のうちの1人を米国の大学に留学させたという。

「10ドル、30ドルといった融資で生活が変化する女性たちのいる現場で彼女たちと話し、こうした運動にずっと関わっていこうと思った」とターナー氏は語る。

■投資家とマイクロファイナンス機関つなぐ役割

 翌2006年6月にターナー氏の事業計画をイーベイが買収し、ウェブサイトが今年10月24日に立ち上げられた。サイトのユーザーは投資家を国別に検索することができる。サイトには融資を求める人たちの写真が掲載されているほか、彼らのビジネス目標も記されている。

 マイクロプレイスは投資家と各国のマイクロファイナンス機関をつなぐ役割も果たす。そのために、マイクロファイナンス機関の正当性を審査することも同サイトの機能の一つだ。

■人への投資は「敬意と尊厳の証し」

 ターナー氏いわく収益率は高くはないが、投資家は「世界の貧困に取り組む」という部分に価値を見出しているという。融資が返済されなかった場合、リスクを負うのは貸し手のほうだが、ワーキングプア層からは予測をはるかに上回る98%以上の高い率で返済がなされているという。サイトには毎日数千人が訪れ、すでに数十万ドルの融資が行われたようだ。

「人一人に投資することは、その人に敬意を払い、人間としての尊厳を高めることになる。単に富を分配するのとはまったく違う」。マイクロプレイスを思いついた朝、ターナー氏はベッドから飛び起きたという。

■長期的拡張も視野に

 マイクロプレイスではサイトで利益をあげたマイクロファイナンス機関から手数料を受け取る。金銭のやりとりはイーベイのオンライン決済サービス「ペイパル(PayPal)」を通じて行われる。

「投資家にとっても、村でバスケットなどを作る人たちにとっても、利益をあげることは重要だ。マイクロファイナンスの長所であり魔法ともいえる部分は拡張性があること。収益こそが拡張につながる」。ターナー氏によると、イーベイはマイクロプレイスを通じた収益のすべてを他の社会的事業に投資することを約束しているという。(c)AFP/Glenn Chapman

【関連情報】「Microplace.com」のウェブサイト(英語)