【12月26日 AFP】急速な産業発展に伴いエネルギー不足に悩むベトナムが、隣国ラオスに20億ドル(約2300億円)規模の巨大水力発電ダムを建設するプロジェクトを立ち上げる。

 今年度8.4%の経済成長率を遂げたベトナムは、電力需要が毎年倍増する勢いだ。しかし、水力発電の供給元となる水源が国内には乏しいことから、水源豊富な隣国ラオスに目をつけた。

 ダム建設予定地は、ラオス北部の古都ルアンプラバン(Luang Prabang)近郊のメコン川(Mekong River)流域。ベトナム電力大手ペトロベトナム電力総公社(PVパワー)は、翌年4月をめどに事前調査をまとめるとしている。完成すれば、現在ラオスで稼働中の既存ダムを超える最大規模のダムとなる。

■「水源」で外貨獲得

 インドシナ半島の内陸国ラオスは、アジアの最貧国の1つに数えられるが、メコン川など水源に恵まれることから、「東南アジアの電源供給国」を目指すべく、水力発電に力を注ぐ。

 現在、ラオス国内で稼働中のダムは10基以下だが、70基を超える水力発電ダム開発の計画が進行中だ。ラオス政府は、国内のダムで発電される電力を隣国のベトナムやタイに売却したい考えだ。
 
 現在、建設着工中の最大規模のダムは、フランスとタイ資本による「ナムトゥン第2ダム(Nam Theun 2)。稼働開始は2009年の予定だ。このほか、中国やタイもラオス国内のメコン川流域にダム開発を計画している。

■浮上する環境問題

 一方で、環境活動家などからは、こうしたダム開発に伴う、地元住民の立ち退き問題や、メコン川流域の希少な生態系の破壊を懸念する声もあがっている。

 米環境団体「International Rivers」のカール・ミドルトン(Carl Middleton)氏は、ダム建設によるメコン川の水環境変化で、魚の減少など生態系への影響を危ぐする。

「メコン川は流域住民に、飲料水、食料となる魚、田畑に実りをもたらす肥沃な土壌、交通手段を提供してきた。メコンはラオスの人々にとって生活の源なのだ」(ミドルトン氏)(c)AFP/Frank Zeller