【6月23日 AFP】夏季の季節風(モンスーン)による豪雨に見舞われたインド北部ウッタラカンド(Uttarakhand)州では22日、再び豪雨になるという予報を受け、巡礼地や観光地に取り残された人たちの救助が急ピッチで続けられた。

 同日、州都デラドゥーン(Dehradun)を訪れたスシル・クマール・シンデ(Sushil Kumar Shinde)内相は、これまでに7万3000人が救助されたが、まだ3万2000人が救助を待っていると述べるとともに、少なくとも550人が死亡し、392人が負傷したと述べた。また23日以降再び豪雨になるという予報が出ているため、3日以内に救出活動を終わらせるよう当局に求めた。

 シンデ内相は、今回の水害は「国家的危機」であり、「戦時体制」で臨んでいると述べた。ヒンドゥー教の聖地バドリナート(Badrinath)に取り残された人たちの救出のため約50機のヘリコプターと1万人以上の兵士が動員されている。テレビは、救助活動を支援するため軍のヘリからラペリング(ロープを使って降下すること)する空挺隊員の姿を放送した。

 バドリナート付近に1週間以上も家族とともに取り残され、陸軍のヘリで救助されて州内の山の町ガウチャル(Gauchar)に運ばれたという女性(26)は、救助を待っている間に食料も尽き、お金も使い果たしたと話した。3歳になる息子とは一緒に避難できたが、ヘリには8人しか乗れなかったため、女性の母親と兄弟はまだ取り残されているという。

■新たな豪雨の予報、時間との闘い

 22日には先週降った豪雨による土砂崩れと鉄砲水で遠隔地の氷河の近くに取り残されていた米国人6人を含む20人のトレッキングのグループがヘリで救助されたほか、陸軍がヒンドゥー教の聖地ケダルナート(Kedarnath)近くの山に取り残された1000人近くと連絡を取ることに成功した。デラドゥーンの空港前には、安否不明になっている家族の写真を握りしめ、心配そうに情報を待つ人たちの姿が見られた。

 インド空軍は道路の補修や臨時ヘリポート構築のための重機を被災地に運んでいると発表した。同州ガウチャルには大型輸送ヘリMi26で燃料30バレルと空挺隊員70人を運んだという。観光客を自宅に帰すための特別列車やバスも運行されているほか、医療や食料支援が取り残された人たちに空輸されている。
 
 増水したガンジス(Ganges)川からは多数の遺体が収容された。シンデ内相は、収容された遺体には損傷が激しいものもあるため身元の特定が困難になっており、遺体から採取したDNAを保存すると述べた。

 ビジャイ・バフグナ(Vijay Bahuguna)ウッタラカンド州首相は21日、事前に適切な警報を出さなかったとしてインド気象局(India Meteorological DepartmentIMD)を批判した。

 ウッタラカンド州に隣接するヒマチャルプラデシュ(Himachal Pradesh)州では、この水害でこれまでに17人が死亡している。インドの隣国ネパールの政府は、今回の豪雨による洪水や土砂崩れにより国内で少なくとも39人が死亡したと発表した。(c)AFP/Mahesh Pandey