【11月1日 AFP】米東海岸に甚大な被害をもたらした大型ハリケーン「サンディ(Sandy)」(温帯低気圧に変わったのち上陸)。その猛威は、果たして気候変動の影響なのだろうか?

 米ニューヨーク(New York)州のアンドルー・クオモ(Andrew Cuomo)知事は10月30日、「気象パターンは変わっていないと考える人たちは現実を否定している」と述べ、気候変動とハリケーンの関連性を示唆した。

 近年、米国を襲っている記録的な干ばつや洪水の原因ならば、気候科学者の多くがクオモ知事の意見に賛同するだろう。だが、熱帯低気圧は気象学的にも最も複雑な問題とされ、専門家の間でも意見は分かれている。

 熱帯低気圧は海面水温が高いと勢力が強くなる。したがって単純に考えれば、海水の温度が上がればハリケーンや台風は発生頻度も威力も増えるということになる。ところが、地球の表面温度が1970年代と比べて明確に上昇しているのに対し、熱帯低気圧の発生数は比例して増えることはなく、年90回程度で一定している。

 とはいえ大西洋のみに限れば1995年以降、熱帯低気圧の発生数も勢力も増していると、米国海洋大気局(National Oceanic and Atmospheric AdministrationNOAA)は指摘する。こうした変化についてNOAAは、どの程度が自然な変動の範囲で、どの程度が人為的な温暖化によるものなのか、科学者にも解明できていないと警告している。

 今世紀中に地表温度が2~3度上がると予想される中、熱帯低気圧をめぐる状況はどのように変わり得るのか。英シンクタンク「海外開発研究所(Overseas Development InstituteODI)」で気候変動について調査しているトム・ミッチェル(Tom Mitchell)は「風速は上がるが、発生数は変わらないか、少し減るだろうと示す証拠が幾つかある」と述べる。

 一方、熱帯低気圧の威力という点では、気候変動の影響が出ているとの見方で科学者らはほぼ一致しているようだ。「サンディ」の勢力の大きさは、国連(UN)の気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate ChangeIPCC)が今年3月に発表した異常気象に関する報告書が描いたシナリオに沿っていると、ミッチェル氏は強調した。
 
 同報告書は、熱帯低気圧によって降雨量が増加する恐れが高いとし、人命や財産に関わるリスクを低減できるよう準備に力を入れるよう訴えている。(c)AFP