【8月30日 AFP】ノルウェーのスバルバル(Svalbard)諸島でホッキョクグマに襲われて重傷を負った16歳の英少年が28日、事件について初めて語った。クマに頭をかみつかれたときは死ぬかもしれないと思ったという。

 スピッツベルゲン(Spitsbergen)島で5週間のキャンプ中だったパトリック・フリンダース(Patrick Flinders)さんら13人の若者は5日、体重250キログラムのオスのホッキョクグマに襲われた。

 フリンダースさんはクマに頭をかみつかれたものの、クマの頭を殴りつけて一命をとりとめた。フリンダースさんの頭がい骨にはクマの歯が数本残っていた。

 一方、フリンダースさんのとなりで眠っていたホレーショ・チャップル(Horatio Chapple)さん(17)はクマに襲われて死亡した。チャップルさんの葬儀は26日に執り行われた。

 英日曜紙サンデー・ミラー(Sunday Mirror)の取材に応じたフリンダースさんは、「見上げると、巨大な口がかみつくのが見えた。クマの鼻のまわりは血だらけだった。その瞬間、ぼくが死ぬかもしれないと思った」と語った。

 「クマの手で叩かれ、ぼくの腕が寝袋の外に出た。それからひじのまわりにクマの歯を感じた。骨をかみ砕かれているのを感じた」「すると突然、クマはぼくの頭にかみついた。頭蓋骨がかみ砕かれているのを感じたよ。頭蓋骨が割れる音が聞こえた。クマはすごく近くにいたので、耳をつんざくようなうなり声が聞こえた」

 「ぼくは殴りかかって、腕をふりまわして、クマの頭を何度も殴って、クマをぼくから引きはがそうとした」

■残る傷痕と罪の意識

 チャップルさんは死亡し、フリンダースさんのそばで眠っていた2人も重傷を負った。クマは、自らも負傷したキャンプ隊のリーダーの1人が銃殺したという。

 フリンダースさんは頭蓋骨を20針縫い、前頭部には大きな傷が残った。左目は斜視になり、耳と頬には生々しい傷がある。斜視を治療するためにさらに手術を受ける必要がある。

 クマに殴りかかったことからヒーローと言われることについて、フリンダースさんは「ぼくはヒーローではありません」と否定した。「ホッキョクグマに殴りかかったのは自分の命を守るため。クマと戦いたかったわけではないんです」

 フリンダースさんは、死亡したチャップルさんについて「全くの不運」の犠牲者だったと語る。「ぼくが彼の寝ていたところにいたとしたら、死んでいたのはぼくだった。彼が死んで、それがぼくじゃなかったことについて罪の意識を感じています」と、フリンダースさんは語った。(c)AFP

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