【3月30日 AFP】東京電力(Tokyo Electric Power Co.TEPCO)福島第1原子力発電所の事故につながった東北地方太平洋沖地震による津波で壊滅的な被害を受けた東北沿岸部について、日本の地震学者が2年前に、大規模地震と津波の可能性を東電と政府に指摘していたことが分かった。

 この地震学者は、独立行政法人産業技術総合研究所(National Institute of Advanced Industrial Science and TechnologyAIST)活断層研究センター(Active Fault and Earthquake Research Centre)長の岡村行信(Yukinobu Okamura)氏。

 岡村氏はAFPの取材に対し、2009年に行われた経済産業省の審議会で、想像を超える自然災害が起きる可能性があると警告したと語った。

 過去の大地震を研究してきた岡村氏は、東北地方の東沿岸部が869年の貞観(Jogan)地震による津波で大きな被害を受けたことを紹介し、この地域では同程度の大地震がいつ起きてもおかしくない状態にあり、たとえ可能性はわずかでも、このレベルの大地震に備えた対策が必要だと指摘したという。

 だが議事録によると、東電の出席者は、この地域、特に福島県沿岸で過去に大地震で大きな災害があったとの歴史的な文献はないと答え、経産省原子力安全・保安院(Nuclear and Industrial Safety AgencyNISA)もこの忠告を軽視し、なんの行動もおこさなかったと岡村氏は語っている。

 東北地方では、貞観地震の悲劇が1100年以上にわたって代々語り継がれてきたという。しかし、11日に東日本を襲ったマグニチュード(M)9.0の地震と津波は、貞観地震を研究した学者の想定を上回る規模だったという。(c)AFP