【3月21日 AFP】放射性物質による食品汚染にはいくつかの要因が関係するが、問題収束までの期間を決める主な要因は放射性物質の種類だと専門家らは指摘する。

 過去の例では、最大の汚染源は、風に乗って野菜や果物、土壌に降りかかる放射能を帯びたちりだ。放射性物質はそこから食物連鎖に入り込み、その結果、牛乳や肉類から高レベルの放射線量が検出されることになる。

 そのような食品を食べると放射性物質が体内に取り込まれ、それが発する放射線がDNAの分子結合を切ることがあり、その結果、がんになる危険性が高まる。これが放射性物質による食品汚染が恐ろしいと言われる理由だ。

 危険性は短期的なものと長期的なものがある。それは放射性物質の特徴や環境汚染の程度によって決まる。環境汚染の程度は、気象条件の影響も受ける。

■ヨウ素131―短期的な影響

 たとえば、ヨウ素131の半減期(放射性元素が崩壊して元の数から半減するのに要する時間)はわずか8日。つまり環境に放出されても数週間程度で崩壊してほとんど無くなってしまう。

 国際原子力機関(IAEA)は19日、「食品中の放射性ヨウ素が人体に吸収されると甲状腺に蓄積し、甲状腺が損傷を受けるという短期的な健康上の危険性がある。特に子ども、若い人の危険性が高い」と説明した。

 対策としては、ヨウ化カリウム剤などの安定ヨウ素剤を摂取することによって、放射性ヨウ素が甲状腺に蓄積するのを防ぐことができる。

■セシウム137、ストロンチウム90、プルトニウム239―長期的な影響

 一方、セシウム137の半減期は30年と長く、環境に影響を及ぼさなくなるまでに数百年かかる可能性すらある。

 1986年4月のチェルノブイリ(Chernobyl)原発事故で放出されたセシウム降下物は、欧州の多くの国で長期的な環境汚染を引き起こし、遠く離れたスコットランドでも牛乳や牛肉の販売制限などが行われる結果となった。

 チェルノブイリ事故から6年以上過ぎた1993年にIAEAが発表した研究によれば、チェルノブイリから1000キロ以上離れたノルウェー南部の山間部の牧場では、トナカイから1キログラムあたり2万ベクレルの放射能が検出され、ヒツジからも同1万ベクレルが検出された。

 ストロンチウム90やプルトニウム239も、長期的な汚染をもたらす放射性物質だ。プルトニウムは人体にとって最も毒性の強い物質の1つでもある。

 だが、原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UN Scientific Committee on the Effects of Atomic RadiationUNSCEAR)が「植物は、土壌中のプルトニウム239をごく微量しか吸収せず、動物やヒトの消化吸収でもプルトニウム239はほとんど吸収されない」と説明しているように、プルトニウムが食品を介して体内に入った場合よりも、呼吸などによって人体の組織に直接接触した場合の方が危険性は高い。

■欧州の摂取限度

 欧州原子力共同体(EURATOM、ユーラトム)のガイドラインでは、放射性ヨウ素の摂取限度は1キログラムまたは1リットルあたりで、乳児食で150ベクレル、乳製品で500ベクレル、その他の食品で2000ベクレル、液体の飲料物については1リットルあたり500ベクレルと定められている。

 また、セシウムなど半減期が10日を超える放射性物質の摂取限度は1キログラムまたは1リットルあたりで、乳児食で400ベクレル、乳製品で1000ベクレル、その他の食品で1250ベクレル、液体の飲料物は1リットルあたり1000ベクレルと定められている。

 また、放射線は自然にも存在しており、ある種の岩石などから発せられている。他にも、食品の保存期間を延ばす目的で殺菌のために食品へのX線照射を許可している国も多い。(c)AFP/Richard Ingham