【1月27日 AFP】オーストラリアのジュリア・ギラード(Julia Gillard)首相は27日、前月末から同国東部を襲っている水害の復興費用の推計を始めて明らかにし、財源捻出のため一時的な課税を実施する意向を示した。

 これによると、現時点で連邦政府が直接負担すると見込まれる復興費用は約56豪ドル(約4600億円)。また、今回の水害で2010/11年度(10年7月~11年6月)のGDPが0.5%押し下げられる見通しだという。

 復興費用の財源としてギラード首相は、各種の歳出削減策とともに中~高所得層を対象にした2011/12年度限りの課税を発表した。

■所得が490万円相当の人なら週82円の負担増

 税率は所得が5万豪ドル(約410万円)を超える人は0.5%、10万豪ドル(約820万円)を超える人は1.0%で、18億豪ドル(約1500億円)の歳入を見込む。ギラード首相は、年収6万ドル(約490万円)の人なら1週間あたり1豪ドル(約82円)程度の負担だと説明した。水害の直接の被災者はこの課税を免除される。

 ギラード首相は、現在のオーストラリア経済は復興費用を負担できる程度には十分強く、将来のインフレ率や金利の上昇の原因となりかねない政府による新たな資金の借り入れを行う必要はないと述べた。

 オーストラリアは過去にも一時的な課税を行ったことがあるが、野党・自由党(Liberal Party of Australia)のトニー・アボット(Tony Abbott)党首は、炭素税が導入される可能性もあるうえ歳出削減の余地も残っているとして、一時課税に反対する姿勢を示している。このため、一時課税の実現には曲折も予想される。

 経済専門家の間では、政府が法人税率の引き下げを計画している一方で、国民に負担増を求めたり、国の財政収支を黒字化させる目標年度を現在の2012/13年度よりも遅らせたりすることを疑問視する声も上がっている。

■難しい議会運営を迫られる可能性も

 連邦議会下院で与野党の議席が拮抗しているため、ギラード首相は来月招集される議会で緑の党(Australian Greens)や地方の無所属議員の協力を得る必要がある。しかし復興費用捻出のため27日に中止や棚上げが発表された政策には温暖化ガス排出抑制策や特定の地域の振興策も多いため、首相が難しい議会運営を迫られる可能性もある。

 与党・労働党(Australian Labor PartyALP)に協力している緑の党は、今回のような自然災害が気候変動の影響で今後ますます大規模になる恐れがある中、水害復興のために温暖化ガス抑制策を犠牲にするのはナンセンスだと主張し、排出抑制策を後退させることには反対する姿勢を示している。

 ギラード首相は被災地で復興作業に従事することを希望する外国人熟練労働者の入国審査の迅速化や、被災地での復興作業に就くことを希望する失業中の国民に旅費の支給を行う意向も示した。首相は「熟練労働力は復興資金と同じくらい重要だ」と述べた。

 石炭や鉄鉱石などの資源を経済成長著しいアジアに輸出するオーストラリアは、先進国で唯一、世界的な金融危機による不況を免れた。現在、同国の失業率は5.0%で、完全雇用に近い状態だと考えられている。(c)AFP/Amy Coopes