【6月19日 AFP】オーストラリアで2009年に起きた大規模な山火事の原因は維持管理に問題があった送電線の発火だったとして、山火事の被災者約600人がシンガポールの電力会社「シンガポール・パワー(Singapore Power)」を相手取り、損害賠償を求める集団訴訟をビクトリア(Victoria)州最高裁に提起した。

 住民側の弁護団は、シンガポール・パワーが送電線の十分な維持管理を怠ったために切れて落下し、キルモアイースト(Kilmore East)で09年2月7日に火災を発生させたと主張。同日発生したオーストラリア史上最悪の自然災害「黒い土曜日(ブラックサタデー)」の中でも、この発火が最も致命的で、173人の死者のうち119人の死亡に責任があるとした。

 オーストラリアの法律事務所、モーリス・ブラックバーン(Maurice Blackburn)は、同訴訟による損害賠償額は数億豪ドル(数百億円)に上る可能性もあるとみている。

 現地紙ジ・エイジ(The Age)は、原告は現在598人だが、山火事で亡くなった人の遺族や負傷した人、財産を失った人、精神的な苦痛に今も苦しむ人などが参加し、最大で1300人まで拡大する可能性もあると報じている。

 原告側は、シンガポール・パワーが、金属疲労を防ぐための10豪ドル(約800円)程度の防振装置の設置を怠ったことや、漏電防止システムが乾燥して風の強い火災の起こりやすい地区には不適切なものだったことなどを主張する予定。また、この送電線は長さ1.1キロメートルもあり、ビクトリア州で最も長い送電線の1つだったが、点検は5年に1度しか行われておらず、さびや電線の劣化は地上からの作業員の監視では見つけることができなかったという点も主張する。

 モーリス・ブラックバーンは裁判官裁判ではなく、オーストラリアの民事訴訟としては異例の陪審員による審理を求めている。

 ブラックサタデーの山火事では住民173人が死亡し、全焼した住宅は2000戸を超えた。(c)AFP