【6月4日 AFP】米南部ルイジアナ(Louisiana)州沖のメキシコ湾(Gulf of Mexico)で英エネルギー大手BPの石油掘削施設「ディープウォーター・ホライゾン(Deepwater Horizon)」が爆発・水没した事故で、米政府はBPに対し、原油除去作業などでこれまでに政府が負担した費用として6900万ドル(約64億円)を請求した。ロバート・ギブス(Robert Gibbs)大統領報道官が3日明らかにした。

 支払期限は7月1日で、米政府は今後も定期的にかかった費用をBPに定期的に請求していくとしている。

 BPは3日までに、海底の油井の上部から破損した送油管を巨大なカッターを使って切除することに成功。油井から噴出する原油をためてサイフォンでくみ上げるため切除部分にキャップをする作業へと移った。

 BPではこれまで流出原油を効果的に止めることができていない。トニー・ヘイワード(Tony Hayward)最高経営責任者(CEO)は事故後、英紙フィナンシャル・タイムズ(Financial Times)に、同社では事故に対する備えがなかったことを認めた。

■原油の拡大域、3日で3倍に

 米政府は送油管切除前の状態で流出していた原油量を1日当たり1万2000~1万9000ガロンと推計しており、事故以降、計2200万~3600万ガロンの原油がメキシコ湾に流出した計算となる。これは1989年にアラスカ沖で1100万ガロンを流出した石油タンカー「エクソン・バルディーズ(Exxon Valdez)」号の座礁事故を上回り、米史上最悪の被害規模となっている。

 マイアミ大学(University of Miami)の調査によると、油膜は現在メキシコ湾沿岸2万4435キロ平方メートルに広がっており、5月1日に衛星で確認された範囲の3倍に達した。米政府は同湾の3分の1を封鎖している。漁業禁止区域は同湾の米国領海の37%に相当する22万9219平方キロに拡大した。

■オバマ大統領にも批判

 バラク・オバマ(Barack Obama)大統領は4日、事故後3度目の視察で現地を訪問する。

 メディアや世論からは、今回の事故に対して大統領が十分に怒りを表していないなどの批判や、米史上最悪の原油流出事故がオバマ政権にとって政治的トラウマになるだろうとの観測が出ているが、大統領はCNNのインタビューに対し、「怒ったり人を怒鳴りつけたりするのに時間が割ければいいが、わたしはそのために大統領に就任したのではない。わたしの仕事はこの問題を解決することだ」と述べ、「この状況全体に激怒している」と付け加えた。(c)AFP/Allen Johnson