【11月26日 AFP】干ばつが続いているオーストラリア・北部特別地域(Northern Territory、北部準州)奥地の町でこの数週間、野生のヒトコブラクダ約6000頭が、飲み水を求めて中心部まで侵入し、水道設備を破壊したり、空港滑走路を占領するなど暴れまわっている。住民たちはラクダを恐れ、家からも出られない状態だという。地元当局が25日、発表した。

 北部特別地域のロブ・ナイト(Rob Knight)準州首相は「ドッカーリバー(Docker River)では、6000頭の野生のラクダがうろついており、町はラクダに『包囲』されている」と語った。空港滑走路にも侵入し、医療搬送などに支障が出ているという。

 オーストラリア中央部には世界最大のラクダの繁殖地となっており、約100万頭のラクダがいる。ラクダは馬やロバとともに植物を食べ尽くし、砂漠地域の壊れやすい生態系に大きな影響を与えている。このため、地元の緑化プロジェクトも無に帰している。

 地元議会は、ラクダ駆除のために追加予算を工面しているほどだが、地元当局は緊急措置が必要だと訴える。ある関係者は、オーストラリア放送協会(Australian Broadcasting Corporation)の取材に「特に心配なのは、ラクダと遊びたがる子どもたちがいること。それから、ラクダのせいで家から出られない住民たちもおり、住民たちへの社会的・精神的影響も心配だ」と語った。場合によっては、ヘリコプター数機でラクダを町の外に追いたて、射殺する処置もありうるという。
 
 オーストラリアのラクダはもともと、19世紀終わりから20世紀初頭にかけて荷物運搬用に持ち込まれた。しかしその後、鉄道や道路の整備が進み、放たれたラクダが野生化した。天敵や人間が少ない地域だったことから、ラクダの数は急増。えさを食べつくしたり、病気をまん延させたりして原生種の動物を駆逐する勢いになっている。(c)AFP