【10月5日 AFP】地震や台風にたびたび見舞われる割に、他の国に比べて被害が限定的な日本。災害への備えに熱心で定期的に防災訓練を行っていることに加え、建物やインフラの耐震化に巨額をつぎ込める財政力があることが鍵だと、専門家らは指摘する。

 群馬大学(Gunma University)の片田敏孝(Toshitaka Katada)教授(社会環境デザイン工学)は、日本でも50年ほど前までは、災害に襲われるとまさに現在の東南アジアのような状況になり、毎年、数千人の犠牲者が出ていたと語る。

 だが、1959年の伊勢湾台風で5000人以上が犠牲になった後は、95年の阪神・淡路大震災で6400人以上が亡くなったことを除けば、災害による死者数は年間数百人、数十人まで減少した。これは、政府が国民の命を守ることを国の責任と考え、堤防建設や洪水・地滑り対策に力を注いできた成果だと片田教授。地元自治体が警報発令や食料・毛布の援助など、準備を整えていることを指摘した。

■日々の備えが充実

 1923年の関東大震災にちなんで制定された9月1日の「防災の日」の防災訓練には、今年は麻生太郎(Taro Aso)首相(当時)を含め約79万5000人が参加した。

 携帯電話で緊急地震速報などの受信ができるよう設定している人も多い。学校では、地震がきたら防災ずきんをかぶって机の下にかくれるよう教えている。デパートなどでは防災グッズが売られ、予備の眼鏡、持病の薬、赤ちゃん用のおむつや離乳食も準備するようアドバイスされている。建物が倒壊して火災が発生し、携帯電話が通じないような最悪の事態に備え、家族で緊急時の集合場所を決めておくことも推奨されている。

 家具転倒防止器具や折りたたみヘルメットのように、災害がきっかけで新たな防災製品が開発された例もある。

■先進技術や統治能力の高さも貢献

 このほか、地震発生時には核施設や新幹線が自動停止する仕組みが導入されたことや、過去数十年で多くの建物の耐震化が進んだことも、「経済大国日本」で災害による犠牲者が他国より少ない理由だといわれている。

 日本の地震速報システムは世界で最も進んでいると指摘するのは、防災科学技術研究所(National Research Institute for Earth Science and Disaster Prevention)の井上公(Hiroshi Inoue)国際地震観測管理室長だ。9月29日にサモア諸島沖でマグニチュード(M)8.0の強い地震が発生した際も、日本は即座に津波注意報を発令した。

 また、統治能力や法整備も、防災統治においては重要だ。汚職で資金が流用されるようなことがなく、公共建築物の構造がしっかりしていれば、倒壊の心配は減る。

 日本は、国際貢献の一環として、防災訓練や防災技術の提供を各国に対して行っている。

 井上氏はインドネシアに日本の地震速報システムを導入するプロジェクトを率いるが、同国で真っ先にすべきことは住宅の耐震化だと指摘した。

 また片田教授は、気候変動により気象災害の数が増加し内容が深刻になるなか、日本をはじめとする各国はより災害への備えを強化すべきであり、政府だけでなく個人もより注意深くなるべきだと指摘している。(c)AFP/Harumi Ozawa