【11月23日 AFP】(11月26日一部更新)地球深部探査船「ちきゅう」により、地表をかつてない深さまで掘り進み、大地震や津波の発生原因の究明に役立つデータを収集するという画期的な国際プロジェクトが、順調なスタートを切った。

 日本政府が所有する重量5万7500トン、開発費600億円の「ちきゅう」は衛星設備を搭載、全長121メートルの掘削塔を持ち、海底下7000メートルまで掘削が可能だ。

 今回の調査は日米主導の統合国際深海掘削計画(IODP)の一環で、6か国から16人の科学者が参加するチームが、プレート同士が出会う太平洋沖海底の掘削、深部における地震活動についての手がかりを調査した。2か月にわたる第1次掘削調査作業は11月15日に終了した。

 プロジェクトの共同主任であるウィスコンシン大学(University of Wisconsin)マディソン校のハロルド・トビン(Harold Tobin)氏は「科学的データの収集としては大成功だ」と語る。「南海トラフ地震発生帯掘削計画」は、2つのプレートが出会い、一方が他方の下に潜りこむときに発生する大規模な地震のメカニズムの説明に役立つという。同氏は「プレートの沈み込み部ならば、世界のどこにでも適用できるだろう」という。
 
 掘削作業が行われた紀伊半島は、地球でも地震が多い地域の一つで、地震学者らも今後数十年以内に大規模な地震が発生すると予想している。世界で発生する大規模な地震の約20%は、日本に集中している。今年7月に発生した新潟県中越沖地震では、活断層上に世界最大の原子力発電所が建設されていることが分かり、大きな非難を呼び起こした。

 第1次掘削調査では、「ちきゅう」は12か所での掘削を行い、海底下400-1400メートルまでの応力状態や地質構造データを取得した。同プロジェクトのもう一人の共同主任、海洋研究開発機構地球内部変動研究センターの木下正高(Masataka Kinoshita)氏は、どの地域が地震の予備段階にあるのか、より正確に推測する大きな手がかりを得たと調査の成功を強調した。第1次掘削調査には日本、米国、英国、フランス、スペイン、韓国の科学者が参加した。今後、世界中の科学者100人以上が参加し、5-6年をかけてプロジェクトを完了する。第2次掘削調査は16日に開始された。

 最終的には「ちきゅう」の掘削パイプを海底下4000メートルまで下ろし、そこからさらに7000メートル下にある実際のプレートの衝突点まで掘削することが期待されている。最終段階では長期観測システムを導入し、プレート境界での活動を直接観測する計画だ。(c)AFP/Miwa Suzuki