【11月19日 AFP】(写真追加)大型サイクロン「シドル(Sidr)」の直撃を受けたバングラデシュで19日、同国軍や救助隊などによる本格的な救援活動が始まった。公式発表では死者数は3100人に上り、数百万人が家を失った。死者数は今後さらに増える見込みだ。

 世界の最貧困地域のひとつである同国南部では、15日夜に同地を襲ったサイクロンにより村ごと吹き飛ばされるなど大きな被害を受けた。無数の生存者が食料や水を必要としている状況だという。

 非常事態宣言下にある同国政府は軍を出動させたが、道路が封鎖されていたり流されて失われており、災害から4日後の現在も救援活動は思うように進んでいない。

 ベンガル湾沿いではサイクロンとともに6メートルの高潮に襲われ、住宅から備蓄食料、穀物、家畜、飲料水などがさらわれた。各地の状況も絶望的だという。

■食糧・医療支援届かず

 湾岸沿いの町Patharghataの当局関係者によると、地域内4万戸の家屋のうち95%が流され、数十人の被災者が市庁舎前で食料や水、医療品などの配給を受けているという。「人々は飢えている。支援物資は現地へ向かっているが、到着にはまだ時間がかかる」。被災地域全体に人間の遺体や動物の遺がいが散逸し、医療救助が及ばない中、伝染病の恐れも浮上してきた。

 軍当局は大半の主要道路が通行可能になったとしているが、被災者の多くは救援が届いていないと語っている。軍は支援機関と協力して空路、陸路、海路を通じて救援物資を輸送中だという。海軍少佐は「19日から13か所にヘリコプターの派遣を開始する」と発表した。

 遠隔地での被害状況が明らかになっておらず、赤新月社(Red Crescent Society)は死者数が数千人に上る可能性もあるとしている。AFPの記者によると最も被害の大きかった湾岸沿いでは、すべての道路網が流され消失している。

 赤新月社はボランティアのネットワークを使い、一時避難所として利用するビニールシートや乾燥食料を配布しているが、ボランティア自身の多くが被災者という状況になっている。

■米、200万ドル拠出を発表

 一方、ローマ法王ベネディクト16世(Benedict XVI)は18日、甚大な被害にあったイスラム国の「兄弟を助けるために」国際的な協力を呼び掛けた。

 米国は200万ドル(約2億2000万円)の救援金を送ることを発表した。また、治療輸送のためのヘリコプターを搭載した米海軍艦船が、5-7日以内に同国沖合に到着する予定だという。フィリピンも医療チームの派遣を発表しているほか、欧州諸国は救援金の提供を申し出ている。(c)AFP/Shafiq Alam