【6月27日 AFP】豪カンタス航空(Qantas Airways)は26日、同社が機内用ヘッドホンとして購入した製品が中国の刑務所で生産されており、生産目標を達成できなかった受刑者が繰り返し殴打されたり独房に隔離されるなどの懲罰を受けていたとの報道を受け、調査を開始したと発表した。

 豪紙オーストラリアン・フィナンシャル・レビュー(Australian Financial Review)によると、中国南部・広東(Guangdong)省東莞(Dongguan)にある刑務所ではカンタスの他、英ブリティッシュ・エアウェイズ(British AirwaysBA)、アラブ首長国連邦(UAE)のエミレーツ(Emirates)航空など、世界の大手航空各社が使用する製品が作られていたという。

 同紙は、東莞刑務所から最近釈放された元受刑者2人に取材。刑務所内でカンタス、BA、エミレーツのエコノミークラスで使用する使い捨てイヤホンを生産していたとの証言を得たという。

 2人のうち、過失致死罪で4年間服役していたというニュージーランド人のダニー・カンシャン(Danny Cancian)元受刑者は同紙に、生産目標が達成できなかった受刑者は「外に連れ出され、テーザー銃で撃たれた」と語った。「非常に残酷な環境だった。毎朝、目覚めると、今日1日を乗り越えられるだろうかと不安に思った」という。

 カンシャン元受刑者によると、週70時間を超える労働に対し、受刑者らに支払われた報酬は1人あたり月8元(約127円)だった。生産したヘッドホンは航空会社の社名が記された箱に入れていたという。

 匿名を条件に取材に応じたもう1人の元受刑者は、電子機器やヘッドホンに使われる誘導子を作っていたと述べた。「カンガルーのロゴのついたカンタス航空のために生産していた。エミレーツやBA、その他たくさんの航空会社のためにも作っていた」

 同紙は、東莞の卓星電子(Joystar Electronics)にも取材し、同社が大型受注に対応するため受刑者らを労働力として活用しており、昨年はベトナム企業エアフォニクス(Airphonics)からカンタス向けに30万個のヘッドホンを生産を受注したとの関係者の発言を伝えている。カンタスはエアフォニクスと取引があったことは認めている。(c)AFP