【6月11日 AFP】米政府が極秘裏に個人のインターネット利用や通話の記録を収集していた問題で、米議員らからはこの事実を暴露したエドワード・スノーデン(Edward Snowden)氏(29)の行為を「国家への反逆」と非難し、香港(Hong Kong)からの即刻の身柄引き渡しを求める声が上がる一方で、同氏の10日現在の所在は不明となっている。

 米国家安全保障局(National Security AgencyNSA)から仕事を請け負う民間会社に勤めていたコンピューター技術専門家のスノーデン氏は、9日付の英紙ガーディアン(Guardian)上で、米政府の監視プログラムに関する情報を漏えいした本人であることを明かした後、宿泊していた香港のホテルをチェックアウトした。

 NSAが世界各地で個人のネット使用や通話記録を監視していたことを暴露したスノーデン氏は、透明性の確保を求める人々や自由至上主義者らの間で一躍、英雄となった。

 しかし、米上院情報問題常設特別調査委員会(Senate Permanent Select Committee on Intelligence)の委員長を務める民主党のダイアン・ファインスタイン(Dianne Feinstein)議員は、詳細は述べなかったものの、米当局はスノーデン氏を徹底的に追及すると語った。

 フロリダ(Florida)州選出の民主党上院議員ビル・ネルソン(Bill Nelson)氏は、「これは内部告発などではない。(国家に対する)反逆行為だと思う」と述べ、スノーデン氏を国家反逆罪で起訴すべきだと主張している。

 中国の特別行政区である香港は、10年以上前に米国との間で犯罪人引渡条約を結んでいる。

 米国務省のジェン・サキ(Jen Psaki)報道官によれば、香港との犯罪人引渡条約は1996年に締結し98年に発効。現在も有効で、長年にわたり米政府は積極的に活用してきたと同報道官は述べた。

 また議員らが党派を超えてスノーデン氏の早期米国送還を求める一方、米紙ワシントン・ポスト(Washington Post)の世論調査では、個人情報の保護よりもテロの脅威に関する捜査をより重視するとの結果が示された。

 スノーデン氏はガーディアン紙とのインタビューで、アイスランドへの亡命を希望する意向を語っているが、アイスランドの入国管理当局は正式な要請は受け取っていないとした上で、スノーデン氏がアイスランドに入国した上での亡命申請が必要だと語った。

 米政府が香港当局にスノーデン氏の身柄引き渡しを正式に要請した場合、香港の主権を持つ中国政府が介入する可能性については、政治アナリストらの見方は割れている。(c)AFP/Dave Clark