【2月19日 AFP】南アフリカの両脚義足の五輪ランナー、オスカー・ピストリウス(Oscar Pistorius)被告(26)の保釈をめぐる審理が19日、同国の首都プレトリア(Pretoria)で行われ、弁護団は被告の恋人だったリーバ・スティンカンプ(Reeva Steenkamp)さん(当時29)殺害に関して、被告は無罪だと主張した。

 14日の事件後、2回目の出廷となる保釈査問会にピストリウス被告は、黒のスーツ、ブルーのシャツ、グレーのネクタイといった服装で現れた。スティンカンプさんの名前が挙がるたびに泣き崩れ、前科はないかという質問に答える際には声が震え、判事に大きな声でと言われ、答え直す場面もあった。

 審理では、ピストリウス被告の恋人だったモデルのスティンカンプさんが殺された経緯について、検察側と弁護側の主張に強烈な食い違いがみられた。

 検察側は、プレトリアにある自邸で被告が銃をとり、義足を着用して7メートルほど歩き、鍵のかかったバスルームの扉の反対側からスティンカンプさんへ向けて4発発砲し、うち3発がおびえたスティンカンプさんに当たり、致死傷を負わせたと述べた。ゲリー・ネル(Gerrie Nel)検事は「彼女はどこへも行き場がなかった。何の武器も持たない無実の女性を被告は撃ち殺した」とし、バレンタインデーに起きた殺人は「計画的だった」と主張した。
 
 また被告がスティンカンプさんを侵入者と誤ったという弁護側の主張に反論するため、スティンカンプさんは13日の夜に宿泊するための荷物を持ってピストリウス邸に来ていたと述べた。

 一方、著名弁護士らが集まるピストリウス被告の弁護団は、殺害は計画的だったとする検察側の主張を否定した。弁護団の1人、バリー・ルー(Barry Roux)氏は「この件は殺人でさえないと我々は申し立てた。一切の譲歩はない」と述べた。

 ルー弁護士は、被告がバスルームにいた人物を侵入者だと思ったと述べ、計画された殺人とは言えないと主張した。さらに被告はスティンカンプさんを助けようとしてバスルームの扉を壊したとも語った。

 弁護団は、ピストリウス被告の保釈を求めるとみられているが、当局はこれを却下すると明言している。

 すでにピストリウス被告は3月から5月に行われるオーストラリア、ブラジル、英国、米国での競技会出場を取りやめている。

 同日、スティンカンプさんの故郷、ポートエリザベス(Port Elizabeth)では、身内だけでスティンカンプさんの葬儀が行われた。棺は白い花で覆われ、悲しむ参列者に見送られながら火葬場の礼拝堂に運び込まれた。

 スティンカンプさんの遺族は、ピストリウス被告に対する恨みはなく、ただ死の真相をはっきり知りたいと述べた。叔父のマイケル・スティンカンプ(Michael Steenkamp)さんはAFPの取材に対し「私たち家族に敵意とか憎しみのようなものはないが疑問があり、それは解決していくと思っている」と語った。

 競技以外の面では軽はずみな行動で時に私生活に問題もあったピストリウス被告を支援するチームは、有名弁護士らによる強力な弁護団の他に、医療専門家、広報専門家から構成されている。

 英大衆紙サン(The Sun)の元編集者で、顧客には英航空大手ブリティッシュ・エアウェイズ(British AirwaysBA)やサッカークラブのチェルシーFC(Chelsea FC)、マンチェスター・ユナイテッド(Manchester United)といった錚々たる名前が並ぶPR専門家スチュアート・ヒギンズ(Stuart Higgins)氏が、ピストリウス被告の広報を引き継いでいる。

 また弁護人の1人、ケニー・オールドウェージ(Kenny Oldwage)氏は2010年にネルソン・マンデラ(Nelson Mandela)元大統領のひ孫が死亡した交通事故で運転者の弁護を請け負い、無罪を勝ち取った経歴がある。(c)AFP/Johannes Myburgh