【11月25日 AFP】インターネット上でつながる謎に包まれたグループ「ドッグハンターズ(Doghunters)」は、毒や空気銃を使ってロシア各地で野良犬を殺害し「野犬への戦争」を仕掛けている。

 だが、この野良犬殺し運動は残虐で何の効果もないとしてドッグハンターズに対し、動物愛護活動家や犬の飼い主たちも「宣戦布告」した。ドッグハンターズが仕掛けた毒入りの餌を飼い主のいるペット犬が誤って食べ死んでしまう事件も起きているという。

 半地下組織的なドッグハンターズのネットワークは着々と広がり、首都モスクワ(Moscow)から他都市へと拡大。今ではシベリア(Siberia)のノボシビルスク(Novosibirsk)やウラル(Urals)地方のエカテリンブルク(Yekaterinburg)にまで広がっている。

 ドッグハンターズのメンバーたちは、インターネット上のあるフォーラムに野良犬たちの写真を投稿し、そのフォーラムで野良犬を毒や空気銃で殺す方法について情報交換をしている。

 メンバーたちは、捨て犬が野良犬化し、路上をうろついて通行人を襲う問題を解決したいのだと説明する。野良犬が続々と子を産んで増加していくという問題もあると語る。

 動物愛護団体によると、モスクワでは「ドッグハンターズ」のメンバーによって過去3年間に約1300匹の犬が殺された。その多くは毒殺だったという。

 ドッグハンターズはウェブサイト「Vredy.org」に掲載している活動方針の中で、グループの目的は「安全で快適な人間の生活を脅かす寄生動物に対する闘い」だとし、「われわれは野犬と闘っているのであり、ペット犬を根絶することはない」と述べている。

 だが、ペット犬の飼い主たちは、ペット犬も毒入りの餌の犠牲になっていると主張している。モスクワ市内のある公園ではこの数週間で、散歩していたペット犬数十匹が毒入りの餌を食べ死んだことから、前月には飼い主500人あまりが「ドッグハンターズ」に抗議しデモ行進した。

 飼い主らは、ドッグハンターズを「サディスト」「虐殺者」などと呼んで非難し、メンバーたちを裁判にかけることを要求した。デモに参加した飼い主の1人の著名俳優は「もし、誰かがイヌに毒を盛っているところを目撃したら、そいつを徹底的に痛めつけてやる。それで刑務所に行くことになったって構わない」と実力行使も辞さない構えだ。

 ロシアでは動物を殺したり虐待することは犯罪行為として、最高禁錮2年の刑が科せられる。しかし動物愛護活動家たちは、当局が該当する同法を適用していないと訴えている。

 旧ソ連時代、当局は定期的に野良犬を駆除していた。だがソ連崩壊後、野良犬の数は膨れあがり、1996年にはモスクワだけで3万匹に達した。また2000年からの10年間で、ロシアでは約400人が野良犬に襲撃されて死亡。モスクワだけでも毎年、1万3000人が野良犬にかまれる事件が起きている。(c)AFP/Victoria Loginova