【10月12日 AFP】米当局は11日、駐米サウジアラビア大使を狙ったイランによる暗殺計画を阻止したと発表した。米国は、イラン政府の上層部で計画されたものだとして同政府の責任を強く追及する姿勢を示している。

 これに対し、駐米イラン大使は同日夜、国連(UN)に抗議書簡を送り、イランに米国がかけている暗殺容疑こそ米国の「邪悪な企みだ」と反撃した。

 米司法省は、イラン政府の一部と共謀してアデル・ジュベイル(Adel al-Jubeir)駐米サウジアラビア大使を米国内で爆発物により殺害しようとしたとして、イランと米国のパスポートを持つ米国籍のマンスール・アルバブシアル(Manssor Arbabsiar)容疑者(56)と、イラン革命防衛隊の精鋭組織「コッズ部隊(Quds Force)」のゴラム・シャクリ(Gholam Shakuri)容疑者を起訴したと発表した。

■「ハリウッド映画ばり」の暗殺計画
 
 9月29日にニューヨーク(New York)のジョン・F・ケネディ国際空港(John F. Kennedy International Airport)で身柄を拘束されたアルバブシアル容疑者は11日、ニューヨーク連邦地裁に出頭した。当局によると、アルバブシアル容疑者は、イラン政府筋の関与を供述したという。

 もう1人のシャクリ容疑者は逃亡を続けている。

 ある米高官が「ハリウッド映画ばり」だと表現した暗殺計画は、米当局に雇われた人物が「おびただしい数の」暗殺や殺人で知られるメキシコの麻薬組織のメンバーを装って容疑者らに近づき発覚したという。訴状によると容疑者たちは、サウジ大使を攻撃するための爆発物をこの麻薬組織から入手できると信じ込んだ。

 別の米高官によると、イラン当局はサウジ大使暗殺に続いて、その他の「人命に対する」攻撃も計画していたという。未確認だが、ワシントンD.C.(Washington D.C.)にあるサウジアラビア大使館とイスラエル大使館が標的となる可能性があったとの報道もある。 

 メキシコ当局は、米捜査当局と緊密に連携して協力したと発表した。これによると、アルバブシアル容疑者はメキシコに入国拒否され、ニューヨークへ空路で送り返されたところで米当局に拘束された。

■イランは反発、国連に抗議の書簡

 一方、イランのモハマド・カザイ(Mohammad Khazaee)国連大使は即日、国連安保理と潘基文(パン・キムン、Ban Ki-moon)事務総長宛てに抗議書簡を送り、「米当局によるこの屈辱的な疑いに対し、イランは断固として、最上級の強い否定をもって非難するとともに、これぞ彼ら(米国)の反イラン政策に沿って考え抜かれた邪悪な計画だ」と激しく反論した。

 さらにカザイ国連大使の書簡は、米国によるイランに対する非難は「米国内の経済問題、社会問題、そして長年外国の独裁政権たちを支援してきた米政府に対する大衆革命や抗議から目をそらさせるものだ」と述べた上で、「イランは常にいかなる形のテロリズムも非難している。そればかりか、テロリズムの犠牲者でもある。明確な例のひとつは、過去2年の間に米国が支援するシオニスト政権(イスラエル)によって多くのイランの原子力科学者たちが暗殺されたことである」と反撃に転じた。(c)AFP/Stephen Collinson